手塚漫画と鉄道の暗い闇

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
Top鉄道関連の本と音楽とDVD >手塚漫画と鉄道の暗い闇

手塚漫画と鉄道の暗い闇

鉄道の世界は、無邪気な鉄道好きが集まる、和気あいあいとした世界でないことは、すでに何度か触れた。

 労働組合の話
  「労働組合の基礎知識」
    http://railman.seesaa.net/article/4288482.html
  「この世界を生き抜く掟」
    http://railman.seesaa.net/article/9685514.html
 国会議員の圧力
  「国会議員の圧力」
    http://railman.seesaa.net/article/6315626.html

現在もこんな状態なのは、日本の鉄道がそれだけ暗い歴史を背負ってきたからである。

今回はその一例を紹介しよう。

国鉄の総裁で、不可解な死を遂げた人がいる。
その人の名は、下山定則。
 

(事件の概略)
昭和24年7月。下山国鉄総裁は、朝8時10分ごろ公用車で自宅を出ると、国鉄本庁には直接行かず、三越本店、白木屋、神田と(降りずに)車をまわし、銀行に寄った後、三越本店で下車。
翌日、常磐線の北千住、綾瀬間で轢死体で発見される。


いかにも不可解であろう。
買い物を装っているようだが、それにしては(隣駅の)神田に車を向かわせたのが理解できない。
何らかの意図があったのか、それとも挙動不審になっていたのか。

(松本清張は、車をまわしたところがすべて地下鉄銀座線の沿線であることから、そのどこかで密会の予定があったものと推理する。)

国鉄の貨物列車に轢かれてバラバラの死体で発見されるのは、国鉄の総裁として皮肉な最期である。


結論から言うと、こんな要人が不可解な死を遂げているにもかかわらず、
真相は闇の中なのである。
最終的な公式見解が出されないまま、時効を迎えてしまったのだ。

自殺か、他殺かの結論すら出なかった。(他殺が有力だが)

なぜ真相が明らかにならないのか。


この事件を知るには、時代背景を理解する必要がある。


(背景)
・GHQの統治時代である。

・GHQは国鉄に約9万5千人の人員整理を迫っていた。

・GHQは、共産党の躍進、急進的な労働運動の発生に手を焼き始めていた。


国鉄は暗い闇に取り囲まれていた。

鉄道は雇用の場を与えるので終戦後は重宝されたが、それは労働運動の舞台になることを意味した。

GHQも、当初は労働運動を軍国主義の対抗として期待したが、しだいにその伸張を警戒するようになる。

さらに、当時の鉄道は兵員輸送を担う重要な軍事インフラ。共産国と国境を接する日本では、国鉄は特に重要な存在だった。

そんな中GHQは、名簿を作成して国鉄に人員整理を迫る。(経済を立て直し、同時に危険分子を排除するため。)

しかし、下山総裁は自らの人選での人員整理を主張。

つまり、下山総裁は、人員整理は行うものの、人選ではGHQの思い通りには動かなかったのである。

自殺説は、下山総裁がGHQの圧力に耐えかねたことを主因とし、他殺説では、(労働組合も疑われるが)GHQの謀殺と推理する。

警察の捜査はGHQには及ばない。GHQが黒でも白でも、それを日本の警察が証明するのはほとんど不可能であった。


この暗い話、手塚漫画の題材の一部にもなった。

それが「奇子」である。

天外家は、仁郎がこの謀略に手を染めて身を崩し、奇子が土蔵に閉じ込められて暗闇で育つことになる。
激動の戦後史で、天外家は欲望と罪悪の中で流され、奇子は育つ。

下山事件は
「日本の黒い霧」(松本清張)
「謀殺 下山事件」(矢田喜美雄)
に詳しいが、面倒ならば「奇子」を読むといい。天外家も奇子も創作だが、題材として使われた下山事件は史実である。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 20:05 | Comment(1) | TrackBack(0) | 鉄道関連の本と音楽とDVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あの漫画、懐かしいなあ、随分前に読んだっけ。

国鉄関連の不可解な事件は、確か他にもあった気がするなあ。

日本史で、習ったように記憶してマス。
Posted by まんがのくに at 2006年01月12日 07:48
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/11542644

この記事へのトラックバック