これから鉄道会社に就職活動をしようとする人は、業界を知るのにどんな本を読んだら良いか。
これがなかなか、答えるのが難しい。
いわゆる現場採用を目指す人たちには、現場の人が書いた本がいいだろう。
「鉄道業界の舞台裏」でも、「鉄道員裏物語」(大井 良)というのを紹介したが、少し古くなるが同様の本はいくつかある。
・鉄道員裏物語 大井 良 彩図社
・車掌マル裏乗務手帳 坂本 衛 山海堂
http://railman.seesaa.net/article/111486144.html現場採用であれば、入社以来かなり長い間、現場に配属されることになる。
出世コースを歩むことになり、一時的に管理部門に配属になったとしても、管理職試験に合格して現場の管理者として帰ってくる。長いサラリーマン人生の多くを現場で過ごすので、入社前に現場の状況を知っておくのは必須だろう。
「お客さまとの触れ合いがある職場」で、列車や駅周辺の案内をしたり、気持ちの良い接客をすることに憧れることもあるだろうが、酔客への対応、理不尽なお客の罵詈雑言、場合によっては、自殺してしまったお客にビニールの手袋で接することもある。
社内事情で言えば、大卒総合職のスピード出世を見上げ、人望のない、若い上司の下で働くことになって、やり切れなさを感じるかもしれない。
悲喜こもごも含まれているのが、現実の仕事である。
現場の話だけでは、大卒総合職には十分でない。
大卒総合職と言えども、ほとんどのキャリアパスは、若い頃、そして管理職になってからも、短くない期間、現場を経験する。今どき、現場とは無縁のエリートなどは存在しない。
そのために現場の状況は知っておくべきだが、同時に管理部門も知る必要がある。
もちろん管理部門も現場の延長であり、別世界が存在するわけではないが、社内の上下関係、出世競争、労使関係、メーカーとのやりとりなど、管理部門ならではの話もあり、これも強烈なものだったりする。
現場の人の対極として、鉄道の経営者の本も数多く出版されている。
この「鉄道業界の舞台裏」のトップにも飾っているが(2009年3月現在)、
・JRはなぜ変われたか 山之内 秀一郎 毎日新聞社
・なせばなる民営化JR東日本 松田 昌士 生産性出版
・国鉄改革の真実 葛西 敬之 中央公論新社
・未完の国鉄改革 葛西 敬之 東洋経済新報社
など、ここ数年だけでも結構刊行されている。(JR関連だけだが)
これらの執筆者は、国鉄改革の際、改革派として分割民営化に尽力し、JR後は経営者として会社を築いてきた人たちである。
会社の誕生、立ち上がり期の話は貴重である。JRは国鉄が頓挫したからこそ誕生したのであり、その猛省が会社経営の基本となっている。そのため、これを踏まえておかないと、会社のベクトルと異なるトンチンカンなことを言ってしまって、偉い人たちの前で恥をかくことにもなりかねない。
例えば、「鉄道の公共性」という単語が良く使われるが、これには注意が必要である。国鉄は公共企業体として、運賃までも国会で審議され、公共性の名の下に経営が翻弄されてきた。独立採算でありながら経営の自主権はなく、ついには破綻。
今は民間企業であり、社員も「公共性」という言葉を使うことで、「採算を度外視する」という意味に誤解されたら、白い目で見られ、出世に響きかねない。だから注意して使う必要があるのだ。
上記の本で、国鉄改革の精神をお勉強しておくことは、自分の身を守ることにもなるだろう。
しかし、元経営者たちの本も、これから働こうという若人には十分ではない。今の会社を国鉄と比較されても、国鉄という組織はすでにこの世にないのだから、会社の選考に関しては参考にならない。
知りたいのは、実際に入社して、周りの人たちはどんな人たちがいるのか、どんな仕事に日々追われているのか、社風は自由なのか。こういうことを、現在の他の会社、業界と比べないと参考にならない。国鉄に比べて良くなっていたとしても、他の会社に比べて劣っていれば、その点は良く考えて会社選びをしなければならないわけだ。
つまり、管理部門の”現場”の実態を知るのが難しいのである。
さて、先日
「よくわかる鉄道業界」(舛本哲郎 小須田英章)(日本実業出版社)
という本を読んだ。
鉄道会社を志望する人をターゲットにしているし、実際に就職活動生にも良く購読されていることだろう。「鉄道業界」をタイトルに掲げる一般書は、これくらいしかない。
この本は全286ページ。そのうち約3分の1が、国鉄民営化までの、日本の鉄道の歴史を記している。実は2人の筆者は、鉄道会社に勤めた人ではなく、記者である。この歴史に関しては網羅的で、しっかりと調べて書かれ
ており、鉄道の歴史を扱った類書の中でも、群を抜くと思う。
鉄道会社の経営者が書いた本などにも鉄道の歴史が書かれていたりするが、この記者たちには太刀打ちできない。鉄道の歴史を知るには良書である。
しかし、それに続くページでは、全体の半分を各社の沿革が続く。まるで事典である。表面的で、百科事典やインターネット、会社パンフレットを読めば調べられるものを、まとめただけの味気なさがある。
その他には、昨今の技術動向、施策があり、各職種の紹介があるが、これも就職情報誌を読んでいるようで、実際に働く現場からはかけ離れている。
タイトルとしては、「日本の鉄道の歴史とこれから」ぐらいの内容である。
就職といえば、人生を賭けた大きな決断である。それにしては、就職活動生が知るべき情報は手に入りにくい。手前味噌だが、本サイト「鉄道業界の舞台裏」がその一助になりえたらと願う。
今日は朝から1歳の娘と、ブログ見てます。
早く寝てくれないかな〜と思いつつ(ToT)/
時間があるときに、またゆっくり寄らせていただきます。
ブログ応援してます(^_^)/
お互いがんばりましょう!!
それでは。また遊びに来ます。
サイト訪問させていただきました。お互い頑張っていきましょう。
これからもよろしくお願いします。
「JR東海が初の1位になるなど、不況の影響を受けにくい鉄道、電力、通信などのインフラ関連企業が順位を上げた。」
「リクナビの岡崎仁美編集長は「景気に左右されにくく採用人数も減らさないインフラ系の人気には、景気後退で就職環境が急変した学生たちの強い不安や危機感が見てとれる」と話す」
ちなみにランキング上位5は。
1位:JR東海(前年4位)
2位:JR東日本(前年9位)
3位:全日本空輸(前年1位)
4位:みずほフィナンシャルグループ(前年3位)
5位:三菱UFJ信託銀行(前年20位)
実は就職活動中にSEに魅力を感じていたのですが今現在ここしか内々定をいただけず悩んだ末に求められていた学校推薦を提出しました。
読ませていただいて働く前から転職を考えてしまいます。現在私立大の学部生ですが院に進むか一旦働いてみてやはりあわなければ転職をするか悩んでいます。 転職を経験されている方にコメントをいただけると嬉しいです。
SEと鉄道は、ある意味正反対の世界だと思います。
前者は、プロジェクトで人が離散集合する形態で、後者は完全にヒエラルキー型。当然、社風などもまったく違います。
その他諸々、ここで書くのは省略しますが、かなり違う世界です。この選択の結果は、人生もかなり変わってくるのではないでしょうか。
どちらの世界も、個人的には、大学院進学は役に立つのか疑問を感じます。院に行くならメーカーを目指した方が良いのでは。鉄道も、SEも、院の2年間はそれだけ年を取るだけで役に立たず、転職の自由度が狭まるように思います。