雪の日のカンテラ(2)

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
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雪の日のカンテラ(2)

(前回までのあらすじ)
雪の少ない地域で雪が降ると、車庫(電車区)に多数あるポイントがネックになる。その融雪には、いまだにカンテラ(アルコールランプの灯油版)が使われている。


カンテラへの給油は、ポリタンクに灯油を満載し、それを運んで行う。

灯油を満載したポリタンクはとても重いが、車が乗り入れられないところにポイントが分散しているので、手で運ばなければならない。

手袋をしていても寒さで手の感覚が麻痺し、その麻痺した手でポリタンクを持ち、吹雪の中歩くのだ。

ポイントは膨大、敷地は広大。
大変な重労働である。


カンテラの灯油は3,4時間で枯渇する。
灯油の準備、給油を終えると、次の給油までそれほど余裕はない。

さらに、カンテラの火は灯油が切れる前に消えてしまうこともあり、その都度作業者が現場に急行しなければならない。


彼らは、昼間は車両の整備を行い、夜はカンテラ作業、日が明ければまた車両の整備をする。
始末に悪いことに、カンテラは煤がつく。使った後は掃除もしなければならない。

雪の晩が2日も続けば倒れてしまうだろう。


厳しいのは、寒さや重さだけではない。
吹雪になれば視界がなくなり、雪で音も消える。列車が近づいてきてもわからない。

怖いのだ。

一応、管理職社員が見張りをするのだが、頭の悪い人もいる。
(所属する組合や政治的な要因もあり、頭の悪い人でも管理職になってしまう。)

ダイヤはろくに確認しない。作業者ばかり見て列車が来るほうを監視しない。

作業者も早く終わらせたいため、だんだん分散して作業をし始める。

統率者不在で危険度は増すばかり。
(そのうえ、ポイントは転換するので、気をつけないと挟まれる。)


作業者が大勢いた昔ならばいいだろう。
しかし、車両の進歩により車庫で働く社員は減り、時代とともにこの作業負担は大きくなった。

社員の年齢構成の偏りもある。
20代の社員もずいぶん増えたが、年齢構成の山は50代。体に不調を抱える人も多く、見た目も「おじいいさん」になっている社員が多い。

ただでさえ冷え性のおじいさんたちが、雪の中で作業するのは見ているだけでつらい。

さらに、労務が厳格な鉄道ならではの事情もある。

車庫には、技術職の社員ばかりではなく、事務職の社員もいる。
しかし、労働内容が明文化されているため、事務職社員がこのような技術職の仕事をすることはない。
(まるでアメリカだ。)


それでも、雪の少ない地域では、二晩続けて雪が降ることが極めてまれなので、雪害対策への投資は行われにくい。
大雪に見舞われて過酷な状況にならないと、投資の理由ができない。


広い車庫で、カンテラの炎がチラチラと瞬く。その幻想的な光景に、見る人が見れば、

「この昔ながらの美しい光景は、これからも残していきたい。」

などと言いかねないが、冗談ではない。

                               終わり



鉄道マンの裏話満載

社名は絶対明かせない 鉄道業界のウラ話



posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 22:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 人身事故・鉄道雑学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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