福知山線脱線事故(事故の日)

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
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福知山線脱線事故(事故の日)


カテゴリ:「福知山線脱線事故」


福知山線脱線事故(運転士の様子)
から続く

航空・鉄道事故調査委員会は、この23歳の若い運転士について、「運転適性及び運転技術について、本事故の要因となるような異常はなかった」と結論づけている。

それでは、事故の日である平成17年4月25日、この運転士に何が起こったのだろうか。


彼の事故の日の勤務は、京橋電車区「休75行路」の2日目であり、前夜宿泊したのは、森ノ宮電車区放出(はなてん)派出所である。

この派出所で1日目の到着点呼を受けた後、23時14分に勤務終了となっている。

ここで23時20分頃、彼が「休憩所のような場所」でジュースを飲んでいるところ、別の運転士と合い、言葉を交わしている。このときの様子にも異常はなかったという。

翌日の事故の日、6時08分に発点呼を受ける。このときも異常は見られない。

点呼後、回218Sとして、大阪の放出(はなてん)駅から京都の松井山手駅まで、片町線を回送電車で下っている。
定刻に出発し、定刻に到着。まったく異常はない。

松井山手駅に到着した9分後、彼は同じ車両で5769Mとして折り返している。
このときも、出発はほぼ定刻の7時35分である。

ここからは、朝ラッシュの上りなので、この列車も徐々に遅れていく。
途中の放出駅では1分20秒遅れ、京橋駅には1分余り遅れて到着する。
8時05分50秒ごろである。

この列車はそのまま列車番号を4469Mと下り列車に変えて、尼崎駅まで走り、さらにそのまま回送の回4469Mとなって、宝塚駅に向かう。
尼崎駅は計画上の停車時間が4分30秒あったため、ラッシュの遅れもここで回復し、定刻発車している。

そして、この宝塚駅到着時に、最初の出来事が発生する。

宝塚駅の手前で、信号により11km/hまで速度を落とした列車は、信号が変わって力行(加速)して進入したが、ATS(自動列車停止装置)により非常ブレーキがかかってしまい、ホームの端にかかったところで停止してしまう。

ATSは、この列車が速度制限を超えそうだったため、運転士に「確認要求」の信号を送り、運転士が「確認扱い」をしなかったために非常ブレーキを作動させている。

このとき運転士は、制限速度を40km/hの曲線分岐器を約65km/hで入ってしまった。車両も大きく動揺しただろう。
速度オーバーの理由は、以下のとおりである。
この列車は2番線の到着だが、もしも1番線で信号が「進行現示」であれば、制限速度が65km/hであり、勘違いしたと推定される。

宝塚駅構内の路線図

ATSの「確認要求」は、「確認扱い」を行えば非常ブレーキはかからない。
しかし、実際には非常ブレーキがかかっている。
速度オーバーで、車両だけでなく、彼自身が精神的に動揺し、「確認扱い」ができなかったことが伺えるのである。
(この分析は、航空・鉄道事故調査委員会によるものだが、私自身も想像できる。)

福知山線脱線事故は、この運転士の精神的な動揺が大きな要因になってくる。
これ以降、彼の精神状態に注目しなければならない。

宝塚駅には、定刻より約44秒遅れて、8時56分14秒頃に到着。この駅で、車両とともに運転士、車掌も折り返す。

ホームでこの運転士とすれ違った車掌は、彼に対して非常ブレーキ作動について聞くと、「「ムスッ」としたような感じで、立ち止まらないまま何も言わずに行った」という。
ちなみに、この車掌は42歳で、年齢的には大先輩である。
それだけ精神的に動揺していたのか、そもそも不遜な態度をとる若者だったのか、良くわからない。

折り返し電車は、5418Mの上り快速列車の同志社前行き。事故を起こす列車である。

「福知山線脱線事故(運転士の不安)」に続く

カテゴリ:「福知山線脱線事故」



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posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 22:36 | Comment(1) | TrackBack(0) | 福知山線脱線事故 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 身心症で1瞬頭が空白状態になる人は乗り物操縦は危険である。それを近親者でも発見困難で本人のみその異常を自覚する事もある。うつ病、幻覚、統合失調症など鮮明な状態までの正常から程度の軽重が微妙で事情がsimulation出来ない状態になって事故につながる。
 ある特急運転手が長いトンネル内でめまいを感じてブレーキを掛けて停車、おさまってノッチを入れたが単線運転での特急の遅れは全線に重大な運行システムに被害を齎す。治療を求めて来た。まずは下車勤務で駅員として改札しているのを見てよくぞ思い切ってくれたと喝采した。半世紀前の青山トンネルの事である。
Posted by at 2015年04月24日 10:59
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