働きやすい会社 - 某JRの愛すべき社員

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
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働きやすい会社 - 某JRの愛すべき社員

「ヒルズ族」などという言葉まで生んだ、ITベンチャー企業。
その中には、野球球団、テレビ局、銀行などの老舗業界にも触手を伸ばし、驚異的な勢いを世間に見せつけてきたところもある。

企業だけではない。その経営者も注目を集めた。

サラリーマン社長とは桁違いの年収、自家用ジェット、芸能人との交遊など、豪奢な生活も話題になった。


これらは、学生にも少なからず影響を与えた。

「豪奢な生活を送りたい。」
「時代を切り開いていきたい。」

動機はどうであれ、一流企業や官僚への道の他に、「起業する」「ITベンチャーで自分を試す」という選択肢を、学生が手に入れたのだ。


今回このような新興企業に注目するのは、鉄道業界と正反対なので、比較がしやすいからだ。


 【フラットな組織は働きやすい?】

あるITベンチャーでの話。社員A氏は、業界で働く魅力をこう語る。

「企画は社長が直接審査し、承認をもらえば完全に任される。そのスピードと自由さがたまらない!」

ITベンチャーは、概して組織が非常にフラットになっている。
ライブドアも、役員クラスと一般社員の間に、中間管理職をほとんど置かなかった。

(余談だが、ホリエモンは社員からも「ホリエモン」と呼ばれていたらしい。ある意味、社長は身近なのだろう。)

新しい企画を立案したら、それを承認するのは役員。
立案から実行までの間の手続きが皆無なので、スピードが求められる世界では適したシステムなのである。
(ただし、こういう会社では結果が厳しく問われるのは言うまでもない。)

鉄道はまるで正反対。組織は、官庁のように非常に大きなヒエラルキーである。

一枚の社内文書を発行する場合も、まず直属の課長クラスが一字一句細かくチェックする。何度も細かい修正を行い、やっと課長の承認を得ると、(社員の労働が関係する場合などは)部内の企画課長にまわされる。

大きい金額のものなどは、さらに部長の承認が必要。

鉄道の部長というは「偉い人」なので、もったいぶっている場合が多い。
どうせ、すでに自分より頭の切れる課長クラスが二人も承認しているのだから、考えることもなく

「良きに計らえ」

という結論になるのだが、ただサインだけするだけでは馬鹿みたいなので、

「担当の者、説明をいたせ!」

から始まり、文言など、重箱の隅をつつくだけつついて、やっと承認する。
(重箱の隅をつついても、課長の体面上、修正はあまりない。)

これで終わらないのが鉄道。

関係部署が他にもあれば、そのすべての部署でこれと同じ承認をもらう。
(例えば、駅社員にも関係すれば営業、乗務員にも関係すれば運輸。)
さらに、社内(現場)への通達となると、総務の承認も必要。


鉄道というのは、企画部門などなくても、列車は走り、お金が入ってくるシステムである。
競争の激しいIT業界と違い、文書などいくら遅れても、実は大勢に影響はない。

それよりも、下手な文書を発行し、労働組合からの突き上げをあう方がよっぽど怖い。
大勢の人に承認させ、間違いだけは絶対に起こらないようにして、スピードを殺す。

しかし、社員は暇なのかといえば、手続きや調整が多いので、仕事は進まず、十分忙しい。


さあ、あなたならどちらを選ぶ。
1.結果は厳しく問われるが、スピードのある外向きの世界。
2.スピードはないが、承認を積み上げ、調整にいそしむ内向きの世界。

あなたのご意見お待ちしています。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 00:02 | Comment(9) | TrackBack(0) | 某JRの愛すべき社員たち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 ウェブサイト拝見させていただいています。
 民営化してもなお、意思決定のスピードの遅さと意識改革が進まない状況に辟易して、鉄道会社に魅力を感じ、「ライバル会社への転職」という意味でJRの社会人採用に応募しようと考えていたところですが、鉄道会社も同様の問題をいまだに抱えており、中にはシビアな組合問題までいまだに抱えているところを見るにつけ、外に見えるものと中の状態が必ずしも一致していないところを見て、思ったほどではない、と痛感しました。
 交通業界も鉄道をはじめとして航空会社、さらには道路会社が料金割引で競争市場に参入しているところを見ると、道路・鉄道もこのままでいいのかどうか、と常に不安になるのですが・・・。
 乱文失礼いたします。
 
Posted by 道路会社現職 at 2007年04月29日 16:56
道路→線路の転職組もそれなりに見受けられるのですが、不満を抱えている方もいらっしゃいますね。「意思決定のスピードの遅さと意識改革が進まない状況に辟易」されているのであれば、道路→線路はおやめになったほうがよろしいかと。

当方としては「意思決定のスピードの遅さと意識改革が進まない状況を変えんとするエネルギーがあり余っている」方を大歓迎なのですが、なかなかそういう方はいらっしゃらない。最初はそういうエネルギーがあっても、結局無意味とも思える内向きの仕事の数々に嫌気がさしてモチベーションが低下してしまうのではないかと。

民営化から20年を経て変わらなかった社風が、今後10年で劇的に変化するとは思えません。
Posted by 現職 at 2007年05月13日 21:57
現職です。

PJ工事の現場を任されています。
現在、上の判断は“とろい”(組織がでかいので仕方ない部分もあると解釈していますが)くせに現場施工の締め切りをきつくいってくる状況で頭を抱えています。現場の兵隊は最良の結果を会社や社会に提供したいと思っています。

いい組織に転向して行くよう期待し、そうしていかなければならないとも思います。
Posted by 1&2 at 2007年06月10日 01:38
女性の職域拡大

先日、この書き込みのために用事のついでに意図的に観察しました。見かけた「鉄おとめ」(矢野直美氏の
表現です)を列挙してみます。

@JR山手線
・運転席に制服で添乗(一緒に乗ること)していた人
・車掌
A時間つぶしに上野駅で散歩中
・出発を待つスーパーひたち号の運転車掌さん
(最後尾でドアの開閉をする人です)
・巡視中らしい駅の助役
・寝台特急北斗星号から下りてきた整備士
・新幹線乗換え改札口の係員二名
・旅行センターのスタッフ多数
・肉声で、発車番線の構内放送をしていた人
BJR高崎線
・車掌
・グリーン車の乗務員
C自宅の近くのJR
・車掌
・下車駅のみどりの窓口の社員(今まで気がつかなかった!)
ちなみに、朝のNHKニュースの交通情報で、
JRの運行情報を伝える輸送司令員も女性でした。

この光景は、10年前までは考えられないことでした。
今日会ったオーストラリア、ニュージーランドの友人に聞くと、鉄道に入社する人の半分が女性であるのは共に当たり前との返事。
対する日本では、私が今日利用したJRが今後
女性社員の割合を二割に引き上げるという方向性を
示したのが、先端的取り組みでしょう。

今後、順次、女性の職域としての鉄道を論じていきたいと思います。
Posted by Via at 2007年10月25日 20:39
『女性の職域としての鉄道』
まず、導入的に次の二点を書いておきます。

私の基本的な立場
・鉄道のあらゆる職域は、女性の働く場として適当であるという考え
・「この会社は女性の採用・定着に積極的/消極的だ」的な噂の根源にならない書き込みを目指したい

現状について
・規模の大きな会社ほど、女性の採用・職域拡大に積極的
・この10年で、出改札や旅行カウンターといったフロント業務、運転士や車掌といった運転業務、駅ビルなどの関連事業に女性の職域拡大が進んでいる
・研究開発、工務部門でも少しずつ増えている
・総合職・現業職を問わず、労使双方で産休後の復帰を志向する傾向が育ち始めている
・各社のホームページ・会社案内の閲覧から、また就職活動で人事と接触した人の証言から、採用担当者に女性が就いている例が少なくないことが分かった

以上を踏まえ、今回は以下の問題提起をしてみます。
「女性の積極採用の意味をどう理解するか」
予めお断りですが、特定の鉄道会社を想定した考察ではありません。また、志望者=正社員を目指しているという、一応の限定をさせていただきます。

仮に、Aという鉄道会社があったとします。A社は、将来的な計画として、女性の割合を男性と半々にします、と謳っていたとしましょう。説明会や会社案内でも、盛んに女性の活躍できるフィールドは広い、というPRも出てきます。では、女性の受験者の皆さんから見ればでは、受験者側は、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。

@様々なコネ採用の枠はなくならないと思ったほうが良い
鉄道業は許認可業務の多い事業なので、政界、官界、財界の縁故の多い世界です。最近、若い人と話していて感じたのは、「男女平等社会の実現へのステップ=採用における完全でフェアな自由競争の実施」という理解をしている人が少なくないことです。しかし、縁故採用を廃絶しようという会社はないと言って良い
でしょう。つまり、縁故のルートで有能な女性をリクルーティングするということは当然考えられるからです(実際、これまでもこうしたルートで集められて来ています)。近親者に政官財の実力者がいる。自分は社員の師弟や縁者である。偏差値の高いブランド大学、名門高校や短大の在学生である。長年のつながりを持つ専門学校で学んでいる。こういった資源を有している人は、積極的に使った方がいいでしょう。

A会社案内に出ている女性比率は正社員の比率か否かを考えよ
女性社員の割合の高さで決めてしまうのはちょっと待て!です。鉄道会社の募集広告を見るたびに気になっているのですが、「待遇:一年更新の契約社員」というものがかなり目立ちます。特急列車の車内改札や駅の出札・改札でも、多くの女性社員が働いているのを目にしますよね。実は、彼女たちの中には契約社員が少なからず含まれていることをご存知でしょうか。できれば、女性社員の比率の中に、契約社員がどの程度混じっているのかを調べてみましょう。OGの先輩たちに聞いてみてください。

B10年後の時点で、どれくらい女性が定着しているのかを見よ
これは、私の知人の教示をベースに考えました。
民営化鉄道の元社員の女性曰く、「20代前半から中半らしき女の子たちを多く見かけるのは確か。しかし、現役学生から見て、やや年齢の離れたお姉さん世代にあたる30歳前後の社員を、駅のフロントや乗
務員室でほとんど見かけない。彼女たちはどうしたのか。反面、その世代の男性が、駅のマネージャーや列車長などの責任者らしき存在になっていることが多い」。彼女も言っていましたが、30歳前後になると、窓口や車掌といった人目に付く部門ではなく、本社や支社の事務・企画部門、あるいは輸送指令、技術系であれば開発・研究部門に異動になることもあります。しかし、そうした部門のポストは限られています。
エリアの狭い某私鉄に勤める社員(男性)は、
「女性の車掌はコンスタントに入っている。ちょっと注意してみると分かるが、その顔ぶれはいつも変わっており、年齢も若いはず。異動先なんて私鉄だから限られている。確かに運転士になれたり、本社の幹部に
なれる女性もいる。そもそも、30を過ぎて働きたいという意志の強い女性を多く採用できているのか。」と指摘。フロント業務等を志望される方は、一度、「少し年齢の離れたお姉さん的」な女性社員がいるかどうかを実地で見てみるといいかも知れません。
Posted by Via at 2007年10月26日 11:25
鉄道会社のことを扱った本ではないですが、お客様へのサービスの現場で働きたいという女性の方に(勿論男性にも)お勧めしたい本があります。

A・R・ホックシールド『管理される心〜感情が商品になるとき』(世界思想社2000年)です。
著者は、アメリカの航空会社の女性客室乗務員が会社側に要求されるものとは何かを、理論分析と聞き取り調査を混ぜて論じています。サービスマインドは生易しいものではないと実感できる本です。

短大・専門卒の人よりも四大卒の資格の女性は、鉄道における接客の現状を教えてもらうチャンスが少ない。また、航空会社との併願傾向もある。よって、新幹線や特急を運行している会社の車掌になりたい方、旅行業部門のフロントで働きたい方は、必読と言っていいでしょう。


Posted by Via at 2008年12月05日 18:50
現役の信通の女性社員です。
ここを読むまで、文書立案について、他社はこんなチェックや承認を受けないことに驚きでした。
Posted by at 2014年03月01日 03:20
そうですね。鉄道だと、どんな「文書」を出すかが非常に重要ですね。
その良し悪しが、非現業の実力を測る「物差し」みたいにみなされますね。

官公庁もまたしかり、そういう仕事も必須ですが、世間的には一般的な仕事ではありません。

三木谷さんが政府関連の仕事をしていましたが、公務員とは理解し合えないでしょうね。
これまでやってきた仕事のやり方が、まったく違いますからね。
Posted by 佐藤充 at 2014年03月01日 08:00
はじめまして。非営利の組織で働くものです。
(単に非民間企業という意味です)

いろいろ感想を持ちましたが、
働く人間にとってみれば、結局は、
向き/不向きの問題なのかなと思います。

私の職場は典型的な役所体質の文書主義ですが、
その文書(報告書関係が中心)のおかげで、
誰々が休むと仕事にならない
(逆に言えば「大事な仕事だから休めない」)、
といった話にはなり得ません。
(指揮命令系統は、たまにおかしくなりますが…)

その文書が、最短経路で仕事をする道標なので、
文書が下手な人間の内部評価は低くなります。

機会は少ないですが、外部でのプレゼンや、
印刷物の発行といった仕事もあります。
機会が少ないだけに何度も部内校正が入ります。
バリバリ仕事をしたい系の人は、
この時に不満を感じることが多いようです。
自分が良かれと思って準備したことに対して、
次々に訂正が入っていくわけですから。

そういうわけで、
「自分の」仕事がしたい人には
不向きな職場環境かなと思います。
反対に「個人責任」なんか追及されちゃ困るわ、
という人間には働きやすい職場です。
(ただし、文書が下手な人間は責任追及されます)

それらひっくるめて、向き/不向きなのかな、
と思いました。
Posted by trm at 2014年03月09日 04:37
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