大卒総合職の配属先(2)

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
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大卒総合職の配属先(2)

前回、大卒総合職の支社配属について紹介した。

「大卒総合職なのだから転勤は覚悟の上」

とは言っても、7年間の長期滞在になることもあり、人生への影響が大きいものだった。
会社の力が非常に強いので、結婚があろうが、何があろうが、配属に関してほとんど考慮されることはない。


7年間は長いと思うが、ここまでなら他の業界でもある話だ。
今回は、鉄道のもっとひどい大卒総合職残酷話を披露しよう。

鉄道の採用は、機械系、電気系、土木系、事務系のように、学校の専攻によって別れる。
逆に言えば、採用の分類はこの程度の大雑把なもの。

当然、会社の中は、機械系とはいっても車両と(駅関連の)設備、電気系は信号通信と電力、土木系は保線と(橋梁や盛り土などの)土木施設と、それぞれ分野が分かれている。

鉄道会社を志望する学生も、会社案内などでこれらの情報は得て、自分がどの分野に進みたいか決める。
進路決めは、悩ましくもあるが、将来への希望を膨らませる楽しいときでもある。


新入社員は、配属支社こそ希望通りにならないが(そもそも希望も聞かれない)、進む分野は希望通りになる。

これは、就職の面接でも確認されるし、採用する側も各分野の要員計画に適合させるようにするので、間違いはない。
・・・はずなのだが、例外が発生した年がある。

その不運な年、ある系統で、配属分野が希望と正反対にされた。
つまり、(例えば電気系でいうと)電力志望の人が信号通信に、信号通信希望の人が電力に配属されたのである。


変な人が人事権を握ったものだ。
そのときの新入社員こそ哀れ。一番希望に満ちている時期に、失意のどん底に叩き落された。

配属を決めた変人の理屈はこうだ。

まず、会社の強さを知らしめたかった。
鉄道では「人事」は絶対。学生時代に自由な空気を満喫してきた新入社員には、強力な権力を示し、規律を刷り込ませなければならない。

もう一つは、大卒総合職を「経営者の卵」とみなしていることによる。
昔、国鉄では国家一種の超エリートが存在したが、民営化後もその名残がある。
今では大卒総合職の採用者も多く、もはやエリートではないのだが、変な意識だけが残っているのである。

「経営者の卵」である以上、ある分野の専門家ではなく、会社全体を見渡せる人でなければならない。だから、まずは自分の希望と異なる分野を経験させて幅を広げよう、という理屈。

無茶苦茶な話でも、周囲や上からの論破がない限り、まかり通ってしまう。
新入社員にしてみれば、採用時の暗黙の約束をいきなり踏みにじられるわけだが、「それが社会、それが会社」ということで片付く。


「経営者の卵」の理屈は、この他にも無理を通す場合に筆者の周りでよく使われていた。
(毎年多数の大卒総合職を採用しておいて「経営者の卵」とはよく言ったものだ。)

「経営者の卵」という表現には頭の悪さを感じるが、言い方を変えれば、鉄道はスペシャリスト志向ではなく、圧倒的にゼネラリスト志向。
他部門との調整が多い鉄道では、上に立つ大卒総合職はゼネラリストの方がいいのである。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:36 | Comment(3) | TrackBack(0) | 就職の現場(非現業編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして、私は某西の鉄道会社に今年入社した者です。
このHPはよく拝見さしていただいております。
急な質問ですが、鉄道職採用で入社した場合は、配属や系統はどの様な基準で決まっているんでしょうか?研修中の成績や、寮での生活態度等で決まってしまうんでしょうか?また、それはどの時点(例えば研修中等)で決まっているのでしょうか?
これらの事は上司に聞いても、うやむやにされてしまい答えてもらえません。
Posted by K at 2006年05月05日 01:01
Kさん

いつもご愛読ありがとうございます。

細かいことは各社、各支社、各年度(そして担当人事)によって
異なるので正確な答えはできませんが、系統は研修前にある程度
決まっていることが多いかもしれません。
配属は、研修中の成績や評判も参考に調整が入る場合もあるでしょう。

あいまいな答えですいません。
鉄道の人事を理解するために、会社側の視点で考えてみる必要があります。

彼らが一番注意しているのは、過激なおじさんたちがいる職場に弱い人を入れて、
感化されては困る、ということです。

そのため、優秀で素直な新人が望みどおりの配属になるというより、
もっと大人の都合で決められることが多いのです。

例えば、ある職場で過激なおじさん集団の比率を一気に低下させるべく、
ある年に新人を厚く配属し、同時に、会社に反抗しないおじさんを転入させる。

そういうミッションを実現させるため、研修の様子などを参考に
発令前に人事の調整をしたりします。
(一番偏向しなそうな新人を過激な現場に入れるなど。)

鉄道業界というのは、他の業界に比べて、社員個人に視点を合わせず、
そんなことに主眼を置きがちな業界なのです。

さらに、鉄道職の配属は大卒総合職の若い奴が決めていたりするので、
明確な基準で決められるというより、かなり属人的な基準で決まっているのが
実情だと思います。
(案外その上司は、あなたの配属の人事権を持っていないかも。)

繰り返しになりますが、鉄道の人事は、明確なものではなく、かなり
政治的なものであることを理解してください。
Posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 2006年05月05日 10:46
ご返事遅くなり申し訳ありません。
そういう事だったのですか。。貴重な情報ありがとうございました。
これからもブログを拝見さしていただきますので、よろしくお願いいたします。
Posted by K at 2006年06月17日 21:45
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