内定式

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売

内定式

10月は内定式のシーズンである。

鉄道会社に憧れ、非常に高い競争を勝ち抜いた人々が、初めて会社の行事に呼ばれる。

新入社員研修も受けていない、初々しい学生達。
気ままな学生時代には未練たっぷりだが、それでも鉄道会社の内定を勝ち取った喜びは隠しきれない。
人気の鉄道会社では、内定を蹴って他社に行ってしまうような人はまずいない。この日に集まった面々が、そのまま同期になる。


本社採用の大卒の内定式では、会長、副会長、社長、副社長のトップクラスが一人は顔を見せる。
巨大企業の鉄道会社では、こんなトップと同席する機会は滅多にない。

内定式の後の懇親会は、子会社のホテルの宴会場で、内定者主宰ということで行われることがあるが、もちろん、トップが参加する懇親会を学生だけに仕切らせるわけがない。
失礼があっては大変、当然形だけの内定者主催である。

余談だが、鉄道子会社のホテルは、本体企業の懇親会で頻繁に使われる。
三井、三菱のような旧財閥が、グループ内で仕事を融通しているのと通ずるが、鉄道のホテルも、本体会社や社員の金だけである程度下支えができる。

 
「本日は、私達の内定式のため、○○会長、△△社長をはじめ、本社営業部○○部長、本社運輸部△△部長、□□労働組合○○委員長、(と、延々偉い人の名前が読み上げられ)、の多くの方々の出席を賜り、まことに感激いたしております!」

知らないところで決められた代表が、壇上で偉い人たちの肩書きと名前をスラスラと話すのを見れば、他の内定者は焦りを覚える。
この日から、いや、実はそれ以前から競争が始まっているのである。

仕事が始まる以前に競争が始まるところに、鉄道の仕事の本質が表れている。

そつのない輩は入社前に社内のコネクションを作り始める。
同じ大学のOBを訪問して

「来年の春からお世話になります」

と挨拶をする。「可愛げのある奴よ」ということで、入社前に職場見学をしたり、社員と飲みに行く。

入社するときもコネが最大の威力を発揮する鉄道では、入社してからもコネは欠かせない。
メーカーと違い、技術力で競争している会社ではない。営業力で他社と差がつく業界でもない。
市場へのアピール度より、社内でのアピール度の方が圧倒的に物を言う。

採用プロセスや内定式から、薄々そんなことに気がつく大卒キャリア組。
内定式の司会をしている同期や、入社前に社内で顔を売っている同期には一歩先んじられたが、これ以上差を広げられるわけにはいかない。

内定式懇親会では、そんな焦りを覚えた学生が、会長、社長の前にビール瓶をもって列を成す。
いきなり会長、社長に近づいても、数万人の社員のいる会社である。覚えてもらえるわけはない。その辺がまだまだ学生。

それにしても、大学で何を学んできたのか知らないが、ビール瓶を持って偉い人に近づく習性を、いったいどこで身に着けてくるのだろう。

彼らのこの習性は入社後にだんだんと磨きがかかり、酒の席を渡り歩いて社内ネットワークを構築する。
将来偉くなる人は、6時以降、酒席で一生懸命働く。売上の変動が 乏しいこの世界では、仕事で偉い人の目に留まるのは困難なのだ。



社名は絶対明かせない 鉄道業界のウラ話


posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:45 | Comment(8) | TrackBack(0) | 鉄道会社の出世競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。しのやんです。

表の鉄道会社はとても輝いていますが、裏では
ドロドロしているということが今回の記事と過
去の記事を読んでよくわかりました。憧れて入
ったものの、理想と現実のギャップが生じて辞
めていく方達が結構いるんでしょうね。

他の方が書かれていたことですが、鉄道会社は
内向きに力を入れすぎているということに僕も
同感です。

では、これで失礼します。m(_ _)m
Posted by しのやん at 2006年10月23日 05:53
内向きの努力が要求される業界なので、
お酒が飲めない人にとっては地獄です。
飲めないだけで人格を否定されかねません。

無意味な飲み会を週に何度もこなすのは基本、
ただでさえ多くはない給料を、
上司とのおいしくないお酒に費やさざるを得ない。


これでは能力もやる気もある大卒総合職社員が、
次々に転職していくのもうなづけます。

高卒くんは他に行き場がなく現状で満足しがち、
不満があれば組合で…という思考回路だから
あれなんですが。
Posted by 現職 at 2006年10月25日 07:25
しのやんさん、現職さん、書き込みありがとうございます。
私も鉄道にいた頃は
「無意味な飲み会を週に何度もこなす」
ことをしていましたね(笑)。不思議なことに、毎回飲み会の名目
があり、断れませんでした。
「お酒が飲めない人にとっては地獄」もそのとおりですね。
多少飲めても、酒好きじゃないとつらいものがあります。

筆者は今、深夜まで残業する毎日なのですが、深夜まで「無意味な飲み会」
につき合わされていた鉄道時代より、はるかに充実しています・・・。
Posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 2006年10月27日 00:30
鉄道業界舞台裏の目撃者さん
こんにちわ。お久しぶりです。鉄道業界に限らずどこの、業界でもそうですが、理想と現実のギャップって激しいですよね。実際に中に入って見なければ分からないという部分もありますし、先日、私のブログ仲間に聞いた話によれば、某鉄道会社の静岡の方で、自殺した人がいたとか、いないとか、どうやら、それは、組合関係上の悩みだったらしいですが、又、支部は違っても、同じ鉄道会社の人で、自殺したという話を聞いた事がありました。そこの鉄道会社の方針や組合関係で、どうしても、出入りが激しかったり、自殺者が絶えないとかってあるのですね。

ところで、終盤を迎えようとしているって本当なのですか?できれば、続けて頂きたいです。もしそれが、無理なら、タイトルを変えて、鉄道話を交えた日常ブログでもいいので、鉄道業界の舞台裏の目撃者さんの話術の優れたHPを愛読していきたいと願うのは、やはり無理なのでしょうか?
Posted by みい at 2006年11月04日 02:17
みいさん

お久しぶりです。ミフィーとオーシャンアローが並ぶデスクの写真、
見させていただきました。こういうツーショットは初めてです!
いい感じですね。

静岡の人身事故はニュースにもなりましたね。鉄道の人間が
自殺するとき、鉄道で死ぬ人が多いような気がします。やりきれない
気持ちです。

鉄道業界の舞台裏をまだまだ発信し、世に問い続けたい
とは思っています。ただ、書く内容がなくなれば、筆を置きます。
日常ブログを書けるような者ではないので・・・。

「鉄道業界の舞台裏」をどのように締めくくり、この場をどうするかは
まだ考えてはいません。
まだこの秋では終わることはなさそうなので、ゆっくり考えようと
思います。

最後までよろしくお願いします。
Posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 2006年11月05日 23:37
こんにちは、初めまして。
来年から働く予定の者なのですが、
酒が一切飲めないのです・・・やはりこれは危険ですか?
酒が飲めないと人格を否定されるとありましたが、
本当にそうなのであればもう一度就職先を考え直そうかなと思うのですが・・・
Posted by サピオ at 2007年06月15日 04:33
飲めないお酒をきっぱり断れる強靱な精神力と、
強力なキャラクター(キャラ立ち)があれば大丈夫。

逆に、誘われると断れず、飲まされてつぶされて…
この繰り返しになってしまうようでは
苦痛のあまり長続きしないと思います。


あらかじめ、自分の中で守る一線をひいておく
(歓送迎会と忘年会以外は断る、など)といいのでは。
「今晩どう?」っていうありがちな誘いには、
あいまいな態度をとらないことが肝心なのです。
Posted by 現職 at 2007年06月15日 21:08
>>現職様
返事が遅くなり大変申し訳ありません。

お教え頂きましてありがとうございます。
酒の席自体は結構好きで楽しめるのですが、
無理矢理飲まされるのが心配で・・・
「自分は飲めない人間」と言うキャラを早々に
作り上げていかなくてはいけないですね。
Posted by サピオ at 2007年06月22日 12:30
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