「定刻発車」

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
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「定刻発車」

最近本屋に行かれた方は、鉄道関係の文庫本が平積みになっているのに気づかれたであろうか。
(この記事は2005年7月に書きました)

定時運行へのプレッシャーと福知山線脱線事故の因果関係が注目される中、文庫本として再出版されたのが、

 「定刻発車」(著 三戸裕子 新潮社文庫)

である。

これは、丸善丸の内本店 販売冊数ランキング 文庫部門でも2位になった。
(5月19日〜5月25日集計)

鉄道関係の書籍としては快挙だろう。



周知のとおり、日本の鉄道は世界で一番正確である。
それはなぜか?

明治時代に鉄道が走り始める前、日本ではお寺の梵鐘によって人々に時間の感覚が刷り込まれていた。

また、日本は街が鈴なりに連なっている特徴がある。
江戸時代、人々の交通手段は「足」だったため、街道沿いに宿場町が連なるように栄えたからだ。
そのため鉄道も近距離輸送として利用されるので、遅れが大きいと利用価値がない。
(歩いたほうが早い、と思われては利用されない。)

このような背景が、正確な鉄道を生む環境になったという。


そして記述は現在の鉄道会社へと移る。

運転士は

「線路の状態を仔細に知り、線路上のそれぞれの地点における車両の走行状態をイメージ」

して「驚異の運転技術」を習得し、指令員は

「線路の本数や分岐器の位置、乗換え口の位置など、駅の構造はもちろん、そのとき現場がどう動いているかがことごとく見えて」

おり、これら鉄道を支える人々(仕組み)によって、定時運行が確立されているという。

否定するわけではないが、(JR東日本への取材が中盤のメインとなっているためか)鉄道会社を賞賛し過ぎているのが気になる。

確かに鉄道マンに浸透している「ダイヤを守る」という志があってこそ定時運行は守られているが、一方でボーっとして停車駅をオーバーランしてしまう運転士もいれば、指令員にも、判断がにぶくて遅れたダイヤをいつまでも解消できない人がいる。

定時運行には内部に阻害要因もあるし、また定時運行の影で安全が置き去りにされては困る。

ジャーナリズムが鉄道会社を絶賛するだけでは危うい。

ちなみにこの本が最初に刊行されたのは福知山線の脱線事故の前。
指令室の取材で、遅れを持った列車が回復運転するのを見て「運転士の本領発揮」と書いたのは皮肉だ。

しかし、前半の歴史的、社会的背景などの指摘はするどく、一読の価値はある。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 12:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道関連の本と音楽とDVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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