生まれてくるのが遅すぎた

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
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生まれてくるのが遅すぎた

生まれてくるのが遅過ぎた。

伊達政宗。またの名を独眼竜政宗。
米沢城主の身で、周辺を制圧して奥州南部を手中にした覇者である。
しかし、関東に覇を広げる頃にはすでに豊臣の世になり、天下は平定されるところであった。

政宗の前に立ちはだかった豊臣秀吉は、全国の軍を引き連れて北条攻めに向かう。
天下人の前に成すすべなし。政宗の野望はここに終わり、秀吉に臣従することとなる。

 「あと20年早く生まれていれば・・・」

と、政宗はつぶやいたと言う。20年早く生まれれば、自らが天下人になっただろうという強い自負があったのだろう。

旧国鉄の鉄道会社への就職を志望し、社内で天下を取ろうと考えている学生諸君。
諸君も、鉄道会社に入り、出世競争を生き抜いたとしても、最後には政宗と同じ言葉をつぶやくことになるかもしれない。

何度か触れたが、国鉄末期と民営化直後は採用を行っていない。つまり、社員の年齢構成に大きなアンバランスが残っているのだ。
民営化後、思った以上に経営状況が順調で、大卒総合職の採用再開に踏み切ったのは平成の幕が上がるころである。

このとき入社した人たちは、社内でも社会的にも大きな脚光を浴びた。
民営化成功の象徴でもあり、しがらみなく新会社を担う人材の初登場である。
さらに、女性の採用が目新しく映った。泥沼の労使関係を抱えて倒れた国鉄が、女性の幹部候補を採用したことで新会社のイメージは刷新されたのだ。

大きなプレッシャーの中で育った彼らだが、出世競争では圧倒的に優位であった。
自分より上の世代が、ポッカリと空いているのである。
彼らは今日まで、順調に、急速に出世している。
民営化後、大卒の採用を大量に増やした某社も、この代だけは国鉄の幹部候補生と同様の急階段を上った。
現場採用のたたき上げで、競争に勝った一握りの人が最後に手に入れることができる、大きな現場の現場長ポスト。彼らは30代で踏み台のように通り過ぎた。
グループ経営強化を打ち出された頃、関連会社の社長の椅子を、退職前の天下りポストから本社課長クラスのポストに変えた。そのとき、彼らがちょうど本社管理職になるのである。


しかし、時は過ぎた。
大卒の採用の多い会社では、すでに大卒総合職(ポテンシャル採用)が社内に満ちている。国鉄時代の幹部候補生とは、希少価値において天と地の差がある。
現場→支社→本社→現場(管理職)と続く彼らの人事コースも変わってきた。
支社、本社のポストが空かなくなり、現場で過ごす年数がどんどんと伸び、出世のスピードも遅くなる。
また、ついには本社のポストが足りず、本社が未経験になる人も珍しくなく、むしろその方が主流にすらなっている。


野心の強い政宗は、理屈では分かっていても、秀吉に臣従する決断をするのに苦しんだ。
鉄道会社でも、我執をむき出し、出世競争に邁進すればするほど、時代の宿命に屈するのに苦労するかもしれない。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 15:15 | Comment(4) | TrackBack(0) | 鉄道会社の出世競争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>支社、本社のポストが空かなくなり、現場で過ごす
>年数がどんどんと伸び、出世のスピードも遅くな
>る。また、ついには本社のポストが足りず、本社が
>未経験になる人も珍しくなく、むしろその方が主流
>にすらなっている。

私も出身学部・大学院の後輩からその
手の話を聞いています。

私が聞いた某社の例です。
総合職採用の旧帝大、トップクラス私大出身者であっても、
30代前後でようやく駅や旅行カウンターのマネージャー
クラスというケースが目だって来ているそうです。
しかも、彼らが、乗務員経験をした高卒や短大卒の社員、
中途採用で入社した社員に追い抜かれるケースも出始め
ているとか。

その会社では、指定券の発売機能を無人(機械)化する駅をふやしつつ,駅や旅行部門の社員を契約社員化(その多くは女性)する計画が進んでいるそうです。そうした契約社員の指導役として入社数年以内の総合職採用者を充てるようになって来ている。

また、その会社についてこんな証言も得ました。
総合職・現業職を問わず、女性が結婚・出産退職をするケースが減った。従って、従来は退職者補充の意味もあって新卒採用に回された分がなくなったということが見られるそうです。
Posted by Via at 2007年07月18日 10:37
結局のところ「現業に甘い」と感じざるを得ません。こんな扱いを続けているといつかは優秀な大卒・院卒者に見向きもされなくなり、会社の頭脳が保てなくなるでしょう。
Posted by 現職 at 2007年08月02日 14:01
わたしが聞いた話によると、採用人数の少ない鉄道会社だからこそポストが空いていて、早く昇進できるらしいです。
しかし、上の話を読むとそうとは限らないのですね…
でも、技術職にかぎると他業界(とくにメーカー)などに比べ圧倒的に採用人数が少ない点で、私が聞いた話もあながちウソではないように思うのですが、実際のところはどうなのか気になります。。。
Posted by カルーア at 2007年08月07日 23:53
なあす
Posted by at 2014年11月24日 19:52
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