遅刻厳禁(1)

 「明暗分かれる鉄道ビジネス」

佐藤 充 4年ぶりの書き下ろし!
沿線に住民がいる限り、あるいは東京~大阪を移動する人がいる限り、JR東日本やJR東海には金が落ちる。その金額は2〜3兆円にもなり、まさに「金のなり木だ」。一方、需要の少ないところではいかに身を切る努力をしても経営が成り立たない。
JR各社と大手私鉄の鉄道ビジネスを俯瞰的に見渡しながら、儲けの仕組みを解き明かす。
2019年9月30日発売
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遅刻厳禁(1)

世界で一番時間に正確な日本の鉄道。
「定刻発車」

鉄道会社も時間には厳しく、特に遅刻には厳しい。

出勤時間に遅れることを、鉄道の世界では「出勤遅延」と呼ぶ。
一度でも出勤遅延をすれば、人事の閻魔帳に記録され、それを一生背負って生きることになる。

大げさに言っているわけではない。たった一度の出勤遅延でも、人事はおろか、周りの社員の記憶からも消えない。

例えば、できる人が昇進できず、さえない人が昇進したとする。(どこの会社でもある話だが。) 周囲は納得できずにいぶかるが、

「あの人は昔、出勤遅延をやったんだよ。」

という解説が流布されると、とたんに納得してしまう。(本当の理由は分からないが。)
それだけ出勤遅延はこの世界では重罪であり、「不祥事」とも表現される。

ちなみに、「朝寝坊したらその日は年休(有給休暇)にする」というサラリーマンの定番手法は通用しない。(特に現場は厳しい。)

労務管理をどこよりもしっかりやっている業界なので、「年休は事前に上長に申請する」という原則が厳しく守られており、突然の年休は「突発年休」として区別される。
その場合、処方された薬など、本当に体調が悪かったことを自ら証明しなければならず、また証明できたとしても「突発年休をした」という記録は消えない。
「出勤遅延」がレッドカードなら、「突発年休」はイエローカード。「突発年休」を何回かやると、人事査定に影響する。


これだけ厳しいので、現場では(特に車通勤の人は)1時間半とか2時間前に出勤する人がいる。

おかしな話だ。
会社に敵愾心を持ち、寸分も残業をせず、勤務終了のチャイムとともに風呂に直行したり、逃げるように職場を出て行くのに、朝だけは異常に早いのだ。


このように、早く出勤するのが習慣になっている現場のおじさんはいい。

筆者の知人は、現場から支社に抜擢され、

「絶対に不祥事は起こせない」

とプレッシャーを感じてしまい、眠りが浅くなって早くに目が覚め、2時間前には出社してしまう人がいた。
かわいそうに、これでは精神的に危うい。

余談だが、この人の転勤は自分から望んだものではなく、人事が良かれと思って勝手にやったこと。人を将棋の駒のように動かせる人事だが、適材適所でないと悲劇を生む。
現場のエキスパートを引っ張り出して、パソコンを使う仕事をやらせ、その結果がノイローゼ。

さらにかわいそうなことに、支社に行った人は管理職になって現場に戻るのが通例。この人も、管理職試験に合格するか、本当に病気になって脱落するか、どちらかでないと現場に戻れない。
残念ながら、後者になる確率が高い。



posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 21:04 | Comment(4) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
JR社員です。イエローカードの突発年休やってしまいました。出勤するのがすごく怖いですけど、出勤遅延って絶対やるわけないって思ってる人ほどやってしまうもの。人間っていつかは慣れが出てきて、たるみがでてしまうと思います。入社される方、仕事に慣れた頃が危険です。気をつけてください。
Posted by kiki at 2006年04月17日 01:15
kikiさん

大変でしたね・・・。やっぱり時系列とか取られました?指導も受けたのでしょうか。
Posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 2006年04月18日 23:48
んなもん気にする前に電車の時間守れよ
努力の方向性が間違ってんだよいつもバカ
Posted by at 2016年06月21日 08:31
学生じゃないんだから当たり前。
Posted by at 2016年08月23日 21:56
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