遅刻厳禁(2)

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売
Top鉄道会社の知られざる社風 >遅刻厳禁(2)

遅刻厳禁(2)

前号で、鉄道会社では年休(有給休暇)の事前申請が徹底され、突然の年休は「突発年休」としてイエローカードになる、という話をした。
「遅刻厳禁(1)」

これは一般の会社と感覚が違うかもしれない。

一般の会社では、事前に休みを申請すると

(こいつ、休みを取る暇があるのか。)

と思われるが、当日の朝に

「今日は体調が悪いので休ませてください。」

と連絡すれば、

(体調が悪いなら仕方がない。)

と許容される。

シフト勤務が組まれる業界と、そうでない業界では、年休の取り方が大きく違う。


話を出勤遅延に戻そう。面白いエピソードを思い出した。

ある大卒新入社員の現場初出社日。

(後日触れるが)鉄道の世界では、大卒、それも本社採用の大卒というのは特別な存在で、90年代までは、現場に1人とか2人しかいないところがほとんどだった。
大卒は新入社員だけ、という現場が多く、当然目立つ存在になる。

彼らは本社の一括採用なので、現場に配属されてもその土地に明るくない。
鉄道会社の社員とはいえ、駅名、乗り換え、快速電車の停車駅もよく分からないわけだ。

さてその新入社員。現場初出社日は当然30分以上の余裕を持って寮を出た。

その現場に行くには、(快速も停車する)かなり大きい駅で降りる。
彼は、途中駅で迷うことなく通勤快速に乗り込んだのだが、これが大きな間違え。ここの通勤快速は特急並の停車パターンで、終点間際までまったく止まらないのだ。

通勤快速が、快速停車駅をどんどん通過していくのに気づいた彼は、びっくりして車内の停車駅案内を見た。

(この通勤快速、全然止まらないじゃないか!)

通勤快速は路線によって色々で、通常の快速よりも停車駅が多いところもあるし、少ないところもある。彼は、通勤快速は快速より止まる駅が多いものだと思い込んでいた。

慌てて携帯時刻表を広げて列車を調べるが、もうどうやっても間に合わない。

受験シーズンだと、間違って乗車した受験生のために、途中駅で臨時停車して車掌室から特別に降ろしてあげることもある。しかし、さすがに「自社社員が乗る電車を間違えたから臨時停車」とはならない。

彼は半泣きになりながら、なすすべもなく遥か遠くの駅まで運ばれ、そこでタクシーを拾い高速を飛ばして現場に滑り込んだ。

現場では、大卒の新人がなかなか来ないことに不審を抱き、管理者が慌て始めたが、無常にも始業のチャイムが鳴る。

仕方なくいつもどおり点呼を始めると、今日紹介されるはずの新人がいないことに一般社員も気づき始めた。しかし、そのまま点呼が終わり、庁舎の前の広場でラジオ体操が始まった。

管理者が平然としているので、

「新人は支社にでも寄ってから来るのか?」

と合点するが、そんな中タクシーが滑り込んでくる。
半泣きになりながら、タクシーから転げ落ち、管理者に取りすがる将来の幹部候補生。
前代未聞の出来事に、現場社員は驚いたり、ニヤニヤしたり、同情したり。
管理者も、もはや隠すことも取り繕うこともできない。

「早く着替えて来い」

と、苦々しく吐き捨てる。

初配属の初出社日。出世意欲満々の彼は、さっそくレッドカードをいただいた。それも、自社の電車を乗り間違えて。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 11:53 | Comment(1) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わかりづれえダイヤ組んでるてめえらの企業怠慢だろ
Posted by at 2016年06月21日 08:35
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/7259932

この記事へのトラックバック