就職の現場(非現業編)

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売

大卒総合職の配属先(1)

何度か触れたが、鉄道の世界は”労使”がメインの世界である。
http://railman.seesaa.net/article/4288482.html

「ということは、社員は会社の言いなりではなく、社員の力が強い業界なのでは?」

と思われるが、実態はそうではない。特に大卒総合職にとっては。


4月は、どこの会社でも新入社員研修が行われている。
鉄道会社でも、大卒総合職の研修が終わり、配属される支社が決まる。

総合職の配属方針は、その年の「人事」によって変わる。
地方出身者をそれぞれの地元に配属させることもあれば、逆に地方を知らない者をあえて地方に送る、というような年もある。

本人の配属希望も聞かれるが、「人事」に対して

「地方は勘弁してください」

とは、総合職の立場上言えるものではない。
まして新入社員研修は、そんなことは言えない雰囲気である。

「いつまでも学生気分でいるな!」

が合言葉。

「学生時代での経験を活かして、頑張って欲しい」

とは採用面接などで言うが、会社としては、まずは巨大組織で問題なく動いてくれる人材にしたい。そういう意味で、新入社員の学生気質は徹底的につぶされる。

「遅刻だけはするな」「職場で問題を起こすな」「巨大組織の指示系統を理解しろ」

そうでないと現場採用の社員への示しがつかない、という鉄道ならではの事情がある。
人材育成の研修というより、規律を刷り込む研修なのだ。


配属もその延長。否応などない、従うのみである。

しかし、この配属は本人が想像する以上に人生に大きな影響を与える。

配属されると、現場で2〜3年、支社で2〜4年働くことになる。
つまり、長い人だと20代の大半をその土地で過ごすことになるのだ。
(もちろん、会社や(技術、事務などの)系統によって異なる。また、次のポストが空くタイミングでも期間は変わる。)

当然ながら、その間に結婚する人もいれば、子供ができる人もいる。
大切な時期に単身赴任になってしまうこともある。
昨今は共働きも多いし、家の事情でついていけない人も多い。

逆に配属先で結婚相手を見つければ、次の異動で離れ、そのまま戻って来れないこともある。

そうなっても考慮の範囲ではない。
(これも会社やそのときの「人事」によるが、基本は考慮されない。)


しかし重ねて言うが、この配属がその人の20代を決めるくらい、長期に及ぶことがある。

「家族と一緒に住みたい」

(そんなこといっても、君だけ特別扱いはできないよ。大卒総合職だってこと、わかっているの?)

「人事」の暗黙の言葉には屈するしかない。
愛する人のところに戻るため、辞めていく女子総合職が毎年必ずいる。

2、3年なら耐えられる人も、5年以上となれば話は別だろう。
まして鉄道の「人事」というのは、労使関係上オープンにできない情報を扱うところなので、鉄壁で覆われている。
そのため、突然、思いもよらないところに異動になることもあり、ある意味、社員は会社に対して非力である。

どこの業界でも、総合職とはこんなものだろうか。

しかし、次回はこれよりもきつい話をお届けします。




社名は絶対明かせない 鉄道業界のウラ話

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posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 00:25 | Comment(25) | TrackBack(0) | 就職の現場(非現業編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大卒総合職の配属先(2)

前回、大卒総合職の支社配属について紹介した。

「大卒総合職なのだから転勤は覚悟の上」

とは言っても、7年間の長期滞在になることもあり、人生への影響が大きいものだった。
会社の力が非常に強いので、結婚があろうが、何があろうが、配属に関してほとんど考慮されることはない。


7年間は長いと思うが、ここまでなら他の業界でもある話だ。
今回は、鉄道のもっとひどい大卒総合職残酷話を披露しよう。

鉄道の採用は、機械系、電気系、土木系、事務系のように、学校の専攻によって別れる。
逆に言えば、採用の分類はこの程度の大雑把なもの。

当然、会社の中は、機械系とはいっても車両と(駅関連の)設備、電気系は信号通信と電力、土木系は保線と(橋梁や盛り土などの)土木施設と、それぞれ分野が分かれている。

鉄道会社を志望する学生も、会社案内などでこれらの情報は得て、自分がどの分野に進みたいか決める。
進路決めは、悩ましくもあるが、将来への希望を膨らませる楽しいときでもある。


新入社員は、配属支社こそ希望通りにならないが(そもそも希望も聞かれない)、進む分野は希望通りになる。

これは、就職の面接でも確認されるし、採用する側も各分野の要員計画に適合させるようにするので、間違いはない。
・・・はずなのだが、例外が発生した年がある。

その不運な年、ある系統で、配属分野が希望と正反対にされた。
つまり、(例えば電気系でいうと)電力志望の人が信号通信に、信号通信希望の人が電力に配属されたのである。


変な人が人事権を握ったものだ。
そのときの新入社員こそ哀れ。一番希望に満ちている時期に、失意のどん底に叩き落された。

配属を決めた変人の理屈はこうだ。

まず、会社の強さを知らしめたかった。
鉄道では「人事」は絶対。学生時代に自由な空気を満喫してきた新入社員には、強力な権力を示し、規律を刷り込ませなければならない。

もう一つは、大卒総合職を「経営者の卵」とみなしていることによる。
昔、国鉄では国家一種の超エリートが存在したが、民営化後もその名残がある。
今では大卒総合職の採用者も多く、もはやエリートではないのだが、変な意識だけが残っているのである。

「経営者の卵」である以上、ある分野の専門家ではなく、会社全体を見渡せる人でなければならない。だから、まずは自分の希望と異なる分野を経験させて幅を広げよう、という理屈。

無茶苦茶な話でも、周囲や上からの論破がない限り、まかり通ってしまう。
新入社員にしてみれば、採用時の暗黙の約束をいきなり踏みにじられるわけだが、「それが社会、それが会社」ということで片付く。


「経営者の卵」の理屈は、この他にも無理を通す場合に筆者の周りでよく使われていた。
(毎年多数の大卒総合職を採用しておいて「経営者の卵」とはよく言ったものだ。)

「経営者の卵」という表現には頭の悪さを感じるが、言い方を変えれば、鉄道はスペシャリスト志向ではなく、圧倒的にゼネラリスト志向。
他部門との調整が多い鉄道では、上に立つ大卒総合職はゼネラリストの方がいいのである。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:36 | Comment(3) | TrackBack(0) | 就職の現場(非現業編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

憧れの仕事 車両開発

以前、鉄道の技術系の仕事振りを紹介した。
自ら開発するわけでもないので、不具合が起きたときには(極端なことを言うと)メーカーを締め上げるのが仕事になる。

優しいだけでは勤まらない

しかし、鉄道事業と言うのは一応技術系の世界であり、JRなどでは一流大学の院卒が大量に採用される。優秀な技術系の人材が集まるのは、「技術 力がありそう」なイメージが浸透しているからだろう。

適職診断の解説 転職・独立

そんなイメージに魅かれた技術系の学生(その中で一番多い機械系の学生)が口にするのは

「将来は車両開発に携わりたいです!」

との想い。

※書籍「鉄道業界のウラ話」の元ネタであるため、本文は有料コンテンツとして公開します。

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posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 15:27 | Comment(13) | TrackBack(0) | 就職の現場(非現業編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

営業ノルマ

「ノルマがなさそうで、楽そうだ。」

面接では偉そうなことを言っても、鉄道を志望する学生の本音はこんなものだったりする。

確かに、住宅販売の営業のような厳しいノルマはない。
鉄道の顧客の大多数は通勤・通学客。営業努力でお客さんになってくれたわけではなく、沿線に住んでいるからお客さんになっているだけだ。
そんな業界に、営業ノルマなんて似つかわしくもなく、意味も乏しい。

しかし、それでも変なノルマが課せられる。

どこの鉄道会社でもそうだが、鉄道事業というのは斜陽産業である。(以前にも述べた。)
日本の人口は減ってくるし、それよりも早く通勤・通学層の人口が減っている。新路線を作れば乗客が集まる時代はかなり昔に終わっているし、既存路線の多くも乗客が減り始めている。
鉄道会社に発展の余地があるとすれば、関連事業しかない。

「自社発行のクレジットカードを、支社で新規に○千枚契約を取って来い」

これは支社営業部に課せられたノルマである。
鉄道の世界は、対内的な体面を非常に大切にするので、意外にもこういうノルマには忠実に励む。

「TO:同期の皆さん

 ご無沙汰しています。
 突然ですが、お願いがあります!
 支社営業部で課せられたカードのノルマが厳しくて、とても達成できそうにありません。
 皆さんの友達、ご家族で加入してくれそうな人いませんか?

 紹介しくれたらお酒でもおごりますので、どうかお願いします。」

営業に配属された同期から、こんなメールが配信されたことがある。

今でこそ鉄道会社のカードは利用価値が上がったが、当初はメリットが非常に乏しいものだった。

切符をカードで買うには、その会社の窓口でしか利用できない。(旅行会社や別の鉄道会社では使用できない。)
払い戻しを受けるには、そのカードを利用した窓口でしか払い戻せない。
同じ会社なのに、カードで購入した切符は別の駅で払い戻せないのだ。
(現金で購入した切符にはこんな制約はない。)
その上、しっかりと年会費は取る。航空会社のようなマイレージもない。

こんなカード、普及するわけがない。

それでも、一定の枚数が発行できてしまうから不思議と言うものだ。
当然からくりがある。
社員を入会させるのだ。鉄道会社というのは(特に旧国鉄の会社は)非常に社員が多い。社員を入会させれば、それだけで結構な枚数が発行できるのである。

陰湿な鉄道の世界では、こういうのはお手の物。
自社のカードを保持しているかどうかで、人事の影響をちらつかせるのである。

知っている方も多いと思うが、鉄道会社の社員は、無料で自社路線が利用できる。(会社によっても違いはあり、また、特急料金は一部負担が必要になる。)
そんな鉄道会社の社員は、クレジットカードで自社の切符を買う機会などほとんどない。そんな社員に年会費のかかる自社カードを持たせようというのだ。

「こんなつまらないことで人事評価を下げたくないですよね?新入社員の皆さん、年間数百円だから必ず入ってください。」

大卒の新入社員など、有無を言わさず入会。
それでもノルマが足りず、若手の営業部員が同期に泣きを入れる。
どちらにしても、一般のお客様を開拓するのではなく、確度が高く、人数も多い自社社員を開拓する。

「お願い、入会して!すぐ解約してくれればいいから!」

同期の営業部員に頼み込まれ、筆者も両親を入会させた。
同期の頑張りに報いたいという義侠心からではない、お酒をおごって欲しかったからでもない。利用価値の乏しい商品を、社内で売り込む同期を哀れんだのだ。

社員に社内の商品を売りつけるのが仕事とは、惨めな人である。




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posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:05 | Comment(3) | TrackBack(0) | 就職の現場(非現業編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

国際部(1)

「グローバル」、小学生までもが知っている、現在を表現するキーワードの一つ。

この「グローバル化」により、国内市場ではさまざまな中国産が溢れ、またそんな中国産と競争するため、日本の若者が「ハケン」とか「ウケオイ」とかいう仕組みで低賃金で働く。
新興国の台頭が資源の需要も高め、日本のような資源輸入国が調達難で悩まされる。
さらに、海外の「ファンド」なる存在が忽然と現れ、日本企業に買収を仕掛ける。幕末の志士が聞けば、怒りで発狂しそうな話である。

各国で市場開放が進み、世界全体が一つの市場へと統合性を高めることで、国内市場が海外市場と一体で連動し、上記のような今までにない色々な変化が発生している。

「やっぱりグローバルな時代でしょ、英語ぐらいできないと駄目だよ。」

「東証で投資しているだけじゃ儲からないよ。グローバルな時代だから、BRICs、VISTAに投資しないと。」

巷でもこんな会話が聞かれるような時代である。

その中で、グローバルとは対極にありそうな鉄道会社。
都市からムラまで広大な土地を国内に持ち、お客様は地元の人々、線路は国境を越えて延びることはなく、完全に国内市場だけで勝負している会社である。
しかし、そんな鉄道会社でも「国際部」なる部署を持っているところがある。やはりグローバルな時代だからか?

その答えを書くのは少し待って、それよりもこの名前に引き寄せられる人々に注目しよう。

これから就職活動をする後輩と、社会人になった先輩が、飲みながら仕事について語り合っている場を想像して欲しい。
商社、プラントエンジニアリング、メーカー(の生産技術部門)などの業界に就職して、アジアに羽ばたいた先輩たちが

「DVDは中国で海賊版をついつい買っちゃうんだよねー。悪いとは知りつつ。」

「上海に出張するとき、どこのホテル使っている?」

と、こんな会話をすれば、鉄道会社を志望する後輩は気後れを感じる。

「自分の就職志望先は鉄道会社。当然海外には縁がないよな・・・」

鉄道会社への就職が時代の潮流に反しているように思えて、気持ちが揺らぐのだ。

しかし、後輩が自宅に戻って鉄道会社の就職用パンフレットを見ると、組織図の中に「国際部」があり、その配下に海外駐在事務所があること、さらには、海外留学制度まで整備されていることを発見すると、心配は吹っ飛び、心は踊る。

「やっぱり”グローバル”の時代だなー。国内の地を這うような鉄道会社でも、海外で勉強できて、国際的な仕事まであるのか。」

(ちなみに、筆者も就職前に少し期待した。)

さらに採用面接で、面接官から

「英検○級もっているのかね。これからは海外の仕事もあるから、ぜひ生かしてくれ。」

などと言われれば、期待に火がつくというものだ。

果たして鉄道会社に就職して、国際的に働くことなどあるのか?冷静に考えれば当然沸いてくる疑問だが、せっかく絞り込んだ就職志望先を、また考え直すのは相当大変なことである。沸いてくる疑念には蓋をして、パンフレットや面接官の言葉を希望にして、突進するのみだ。走り出してしまえば、容易に方向を変えられない。

期待して入社した若者を待ち受ける「国際部」とはどんな部署か。
話が途中で申し訳ないが、その実態の紹介は次回に譲るとしよう。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:55 | Comment(3) | TrackBack(0) | 就職の現場(非現業編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

国際部(2)

(この記事は2007年10月に書きました。)

前回、「国際部」を持つ鉄道会社があることを書いた。

「国際部」の実態には触れなかったが、「国際部」に期待を膨らませる学生の心理を紹介した。

「鉄道会社には、グローバルに活躍できる舞台がないのではないか?」

そんな悩みを持つ学生にとって、「国際部」の存在が希望となる。

しかし、結論から言えば、鉄道会社の「国際部」の実態はお寒い。

当然と言えば当然で、調達は国内メーカーがほとんどで、サービスの販売先は国内市場のみ。鉄道事業というビジネスモデルの中で、海外との取引が発生することはほとんどない。

余談だが、鉄道会社もコストダウンのため、車両に海外部品を積極的に採用した時期がある。しかし、これは定着しなかった。

海外の鉄道と日本の鉄道では、輸送の過密さ、機器にかかる負荷が異なるため、要求される品質のレベルも違う。
日本では、大都市圏のラッシュ時間帯は2、3分おきの過密ダイヤとなるところもあり、一つのトラブルがダイヤ全体に波及する。同じ故障でも、列車密度によって引き起こされる影響がまったく異なるのだ。
さらに、駅間が短い場合が多いために加減速、ドア開閉も多く、機器への負荷も高い。激しい混雑もそれに追い討ちをかける。当然ながら、負荷が高ければ故障発生率も高くなる。

この高い要求に対して、海外メーカー品はなかなか答えられず、故障が発生した場合も原因究明、対策の実施が迅速にできない。
結局、一度は海外メーカーの部品を採用してみたものの、国内メーカーに回帰することになる。
余談になってしまったが、仕事内容から言えば、海外部品を採用しても、国内の商社を通じて購入するので、国際的なものではない。
さらに、これら調達業務は各事業部門で行うので、国際部の業務とは関係ない。

海外鉄道会社との技術提携も、密接なものでなければ、効果が高いものでもない。
鉄道会社というのは基本的にメーカーではなく、メーカーから調達したものを利用してサービスを提供する「ユーザー企業」だ。ユーザー企業同士が技術提携をしたところで、新製品、新技術が生まれるわけがない。海外メーカーの技術や、海外で発生している技術的課題を、鉄道会社から仕入れる程度のものである。鉄道事業全体から見て重要な業務とは言えない。
どちらにせよ、これも研究開発部門の業務で、国際部の業務とは関係ない。

では、海外との取引が乏しい鉄道会社で、「国際部」の主要業務は何だろうか?

まずは海外から視察、研修に来る人たちの対応である。
JRは、民営化に成功した鉄道事業として海外からも注目される。
鉄道は、非常に大きな投資と非常に広い土地の確保が必要なので、国を問わず、官が敷設し、そのまま官営となっている場合が多い。近距離ならばともかく、都市間を結ぶ鉄道ともなれば官営でスタートするのがほとんどだろう。
官営の鉄道事業は、大きな利権がからむために経営が歪みやすく、赤字になりやすい。これを民営化で正し、効率化、黒字化させて、法人税を払わせると、国の赤字事業が一転、税収に貢献するようになる。
JRは民営化で、品質を落とさず、運賃値上げもせず、輸送力を増やした上で、経営を軌道に乗せた。注目される成功例である。
さらに、民営化が成功しただけでなく、高速鉄道や、ダイヤの正確さなど、鉄道システムのレベルも高いため、海外からの視察、研修の要望は高い。

国際部は、海外からの視察、研修の依頼に対して、日程を組み、現場や支社と調整し、宿泊の手配をする。特に賓客であれば接待も用意し、社内の偉い人と会談もセッティングする。通訳の手配も怠れない。
言ってみれば、現地旅行代理店のようなものだ。
国際部でありながら、受け入れの場合、英語が必要になる場面はほとんどない。日本語で、国内の関係各所に電話するのが日常の業務である。

逆に、社内の偉い人が海外を視察することになれば、海外駐在事務所が現地旅行代理店となる。
ヒエラルキーの高い、ピラミッド型組織の典型なので、偉い人には非常に気を使わなければならない。
事前に視察先の情報を整理して渡しておき、現地の空港で出迎えを待たせておくのは言うに及ばない。視察への随行も必要であり、企業視察以外にも、切符を手配して色々な鉄道に乗せる。特に、偉い人がマニアの場合、その趣味的な欲求を満足させておかないと機嫌を損ねかねない。
周りを振り回すような偉い人だと、その海外視察の意義がどれほどあるかは分からないが、気苦労ばかり多い。

それ以外は、海外鉄道事情の情報収集。新聞やインターネットで記事を集め、社内に情報発信する。
事故に関する情報は、経営者や幹部が把握しておかないとまずい。大企業で、安全に関わる企業なので、とかく外部からの批判対象になる。揚げ足を取られないレベルに理解し、外部に語れるようにしておくのが重要なのでなる。

以上、国際部の業務は、海外の鉄道が対象なだけで、内容は「総務部」の属するようなものだ。
事業を推進する事業部というよりも、海外関連の窓口である。
「国際部」という大きな看板を掲げている一番の意義は、存在そのものが広告塔になり、学生を惹きつけ、会社のイメージアップになっていることだろう。

存在意義はそれなりにあるかもしれないが、この部署を目指して入社するのは正しい選択とは思えない。どう考えても、熱意ある者が生涯を捧げる仕事ではない。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:45 | Comment(4) | TrackBack(0) | 就職の現場(非現業編) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする