以前、駅の出札(み○りの窓口)のガラの悪い「営業職」の人たちのことを書いた。
「俺は営業(1)」
http://railman.seesaa.net/article/20167784.html 「俺は営業(2)」
http://railman.seesaa.net/article/20887998.html荒くれた鉄道文化の血を引くオジサンの中には、とんでもない人がいるものである。
対照的に、旅行業の窓口の女の子たちは人当たりが良い。
混雑する駅の出札の場合、「スピードが命」とばかり、人をさばくように接客する人もいるが、旅行業の窓口は、もともと接客時間が長くなる商品を売るところなので、ゆったりしている。
切符の発券は圧倒的に出札の方が早いが、買う方がモタモタしていると、出札のオジサンにイライラされて嫌な顔をされかねない。
商品を売るほうがイライラし、買う方がオロオロするのも変な話だが、国鉄時代からの悪習。それとは無縁の女の子たちが登場したのはうれしいことである。
長距離切符や定期券は安いものではない。物腰柔らかく、丁寧に接客して欲しいものだ。
一方で、彼女たちは驚くほど鉄道を知らなかったりする。
(今は、契約社員がほとんどになっているので、なおさらかもしれない)
秋田新幹線が開業した頃の話。
サラリーマン風の中年男が、旅行業の窓口に切符を買いに来た。
「来週水曜日、朝9時代のやまびこで盛岡まで。禁煙の窓側で。乗車券はここからね。」
(当時は「はやて」が登場しておらず、「やまびこ」が盛岡までの最速列車であった)
「かしこまりました。しばらくお待ちください。」
普通の駅員とは違った、ちょっとおしゃれな制服を着た旅行業の女の子。
鉄道会社の社員とはいえ、気持ちは旅行会社で働いている気分で、丁寧な接客をする。
もう数年のキャリアがあり、マルスの操作は慣れたもので、流れるように入力して発券。
機械から出てくる乗車券、特急券を、受け取って内容を確認する。
「あれ?秋田新幹線の切符が出てきた・・・」
いつもどおり発券したのに、いつもと違う!
行き先はちゃんと盛岡になっているのに、「やまびこ」になっていない。
マルスがおかしい?ひょっとして大変なことが起きたのかも!
慌てて先輩の元に駆け寄る。
「これって、秋田新幹線ですよね・・・、盛岡なのに「こまち」が出てきちゃって・・・」
先輩の女の子も「???」と、しばらく無言。
ちょっとちょっと、お嬢さんたち。秋田新幹線「こまち」は、盛岡まで「やまびこ」(当時)と連結して走りますから。東北新幹線を経由しないで、どうやって秋田まで行くと思っているの?
鉄道会社には、ディープなマニア社員が潜んでいて、彼らにはしょっちゅう驚かされる。
完全に贔屓目だが、旅行業の窓口の女の子たちの無知さには、驚かされても微笑ましく感じる。
図解入門業界研究 最新鉄道業界の動向とカラクリがよーくわかる本
業界のシリーズ本で、鉄道業界の本が新たに刊行された。
筆者は亜細亜大学講師の佐藤信之氏。
「鉄道ジャーナル」にも連載している人である。
「交通政策」が専門なので、(就職を志す人にどれだけ役立つかは疑問だが)鉄道の施策に関わる法律にページを割(さ)いている。
例えば、新線の建設で、どの法律に基づいて、どの財源を使って補助金を出しているか、などの説明である。
その他、鉄道会社だけでなく、信号機メーカー、車両メーカーなどにも触れているところが、業界本としての完成度を高めている。
リクルートの調査によると、2010年卒の大学生の就職志望企業ランキングで、1位JR東海、2位JR東日本と、不況の影響で人気が上がっている鉄道業界。この本も売れ行き好調だとか。

図解入門業界研究 最新鉄道業界の動向とカラクリがよーくわかる本
佐藤信之(著) 秀和システム
(類書)

よくわかる鉄道業界 (業界の最新常識)
舛本 哲郎 (著), 小須田 英章 (著) 日本実業出版社