鉄道会社の知られざる社風

 「誰も語りたがらない 鉄道の裏面史」

佐藤 充 5年ぶりの書き下ろし!
107 名の死者を出した「福知山線脱線事故」、政治家の思惑がからみあう「新幹線の利権」、鉄道が買われる「阪神電鉄村上ファンド買収事件」、東京を襲った未曾有のテロ「地下鉄サリン事件」、首都圏で起こった乗客の暴動「上尾事件」、初代国鉄総裁の謎の死「下山事件」……
2015年5月15日発売

優しいだけでは勤まらない

鉄道会社の現場の実態については、何度か取り上げてきた。

 運転・車掌: 「昼下がりの運転台」 「問題社員(1)」

 駅: 「駅(改札編)」

 車両: 「問題社員(2)」

今回は、非現業の実態を見てみよう。大手鉄道会社の社風が少しは伝わるのではないだろうか。


鉄道のような社員の多い(労働集約型)会社では、まさにピラミッドのような組織体系になっている。
現場、支社、本社が三層となり、また支社の中でも、地域本社のような支社がある。

ちなみに他の業種では、大手企業とは言っても、必ずしもこんな深いヒエラルキーになっているわけではない。
化学会社のような装置産業では、現場はあっても支社がなかったり、商社のようなところでは現場がなかったりする。

社員が多くて組織も大きいのが鉄道の特徴である。


そのピラミッドの頂点にあたる本社。超大手鉄道会社の本社といえば、まさに雲の上の世界。

「ちょっと説明しに来てよ。」

車両や設備に不具合が発生し、本社の担当者がメーカーを電話で呼びつける。

肩書きのない担当者からの電話でもメーカーは震え上がる。超大口の得意先のご機嫌を損ねては大変。

あわてて資料をそろえ、社内で打ち合わせをして準備を整えると、鉄道会社へ”登城”する。

営業は、登城行列の先頭。続いて、技術(保守)の担当者、技術(開発)の担当者、技術課長、場合によっては部長、役員もついてくる。

大手門にあたる受付に着くと、メーカー一行は、登城の旨と、面会する担当者の名を伝える。来訪を伝えられた担当者は受付に開門の許可を出す。

米つきバッタの営業が、すれ違う城内の人々に頭を下げ続けながら、担当者の席まで進む。

受付で連絡を受け、メーカーが面会に来ることを知っていても、担当者は行列が席に来るまで腰をあげない。
あわれメーカーの役員。ここでは小僧の使いと変わらない。

ようやく会議室という名の別の間に通され、着座することが許される。

しかし、残念ながら別の間とはいっても実態はお白州。これから始まるのは厳しい取調べである。もちろん茶が振舞われることはない。

お白州でみっちりしぼられるまで、メーカー一行は開放されないのだ。


このように、超大手鉄道会社では、メーカーに対して威張り、厳しい態度をとる。

ある意味、それは仕方がない面があるかもしれない。

鉄道会社は、基本的に自社では何も作れない。(一部車両の組み立てをやるところもあるが、それは高度な技術分野ではない。)

それでいて、ピラミッドのような組織であるため、何か技術的な問題があれば、技術担当への上からの圧力は強い。
自分で開発したわけでも、作ったわけでもないのに説明しなければならないのだ。そのためメーカーの調査が終わらないと、何も始まらない。それまではひたすら、

「メーカーに原因と対策を報告するように、厳しく対応しております。」

と弁明するしかない。

メーカーに「厳しく対応」しておかないと、上から

「メーカーの言いなりになっているからダメなんだ!早くしろ!」

と言われてしまう。

自分で開発できず、生産できない、悲しい鉄道会社の技術屋。
彼らは、メーカーを締め上げ、何としてでも原因と対策を出させなければならない。

一流大学で技術を修めた彼らだが、その知識は、メーカーの報告書を理解するためだけに使われる。(実際、大学を出ていない人が担当することもある。)
技術力より、メーカーを動かす力の方が大切である。

方程式はまったく役に立たない。それより、メーカーに甘く見られないような凄みを持て。そして、たまには怒鳴れ。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 00:16 | Comment(6) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

遅刻厳禁(1)

世界で一番時間に正確な日本の鉄道。
「定刻発車」

鉄道会社も時間には厳しく、特に遅刻には厳しい。

出勤時間に遅れることを、鉄道の世界では「出勤遅延」と呼ぶ。
一度でも出勤遅延をすれば、人事の閻魔帳に記録され、それを一生背負って生きることになる。

大げさに言っているわけではない。たった一度の出勤遅延でも、人事はおろか、周りの社員の記憶からも消えない。

例えば、できる人が昇進できず、さえない人が昇進したとする。(どこの会社でもある話だが。) 周囲は納得できずにいぶかるが、

「あの人は昔、出勤遅延をやったんだよ。」

という解説が流布されると、とたんに納得してしまう。(本当の理由は分からないが。)
それだけ出勤遅延はこの世界では重罪であり、「不祥事」とも表現される。

ちなみに、「朝寝坊したらその日は年休(有給休暇)にする」というサラリーマンの定番手法は通用しない。(特に現場は厳しい。)

労務管理をどこよりもしっかりやっている業界なので、「年休は事前に上長に申請する」という原則が厳しく守られており、突然の年休は「突発年休」として区別される。
その場合、処方された薬など、本当に体調が悪かったことを自ら証明しなければならず、また証明できたとしても「突発年休をした」という記録は消えない。
「出勤遅延」がレッドカードなら、「突発年休」はイエローカード。「突発年休」を何回かやると、人事査定に影響する。


これだけ厳しいので、現場では(特に車通勤の人は)1時間半とか2時間前に出勤する人がいる。

おかしな話だ。
会社に敵愾心を持ち、寸分も残業をせず、勤務終了のチャイムとともに風呂に直行したり、逃げるように職場を出て行くのに、朝だけは異常に早いのだ。


このように、早く出勤するのが習慣になっている現場のおじさんはいい。

筆者の知人は、現場から支社に抜擢され、

「絶対に不祥事は起こせない」

とプレッシャーを感じてしまい、眠りが浅くなって早くに目が覚め、2時間前には出社してしまう人がいた。
かわいそうに、これでは精神的に危うい。

余談だが、この人の転勤は自分から望んだものではなく、人事が良かれと思って勝手にやったこと。人を将棋の駒のように動かせる人事だが、適材適所でないと悲劇を生む。
現場のエキスパートを引っ張り出して、パソコンを使う仕事をやらせ、その結果がノイローゼ。

さらにかわいそうなことに、支社に行った人は管理職になって現場に戻るのが通例。この人も、管理職試験に合格するか、本当に病気になって脱落するか、どちらかでないと現場に戻れない。
残念ながら、後者になる確率が高い。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 21:04 | Comment(4) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

遅刻厳禁(2)

前号で、鉄道会社では年休(有給休暇)の事前申請が徹底され、突然の年休は「突発年休」としてイエローカードになる、という話をした。
「遅刻厳禁(1)」

これは一般の会社と感覚が違うかもしれない。

一般の会社では、事前に休みを申請すると

(こいつ、休みを取る暇があるのか。)

と思われるが、当日の朝に

「今日は体調が悪いので休ませてください。」

と連絡すれば、

(体調が悪いなら仕方がない。)

と許容される。

シフト勤務が組まれる業界と、そうでない業界では、年休の取り方が大きく違う。


話を出勤遅延に戻そう。面白いエピソードを思い出した。

ある大卒新入社員の現場初出社日。

(後日触れるが)鉄道の世界では、大卒、それも本社採用の大卒というのは特別な存在で、90年代までは、現場に1人とか2人しかいないところがほとんどだった。
大卒は新入社員だけ、という現場が多く、当然目立つ存在になる。

彼らは本社の一括採用なので、現場に配属されてもその土地に明るくない。
鉄道会社の社員とはいえ、駅名、乗り換え、快速電車の停車駅もよく分からないわけだ。

さてその新入社員。現場初出社日は当然30分以上の余裕を持って寮を出た。

その現場に行くには、(快速も停車する)かなり大きい駅で降りる。
彼は、途中駅で迷うことなく通勤快速に乗り込んだのだが、これが大きな間違え。ここの通勤快速は特急並の停車パターンで、終点間際までまったく止まらないのだ。

通勤快速が、快速停車駅をどんどん通過していくのに気づいた彼は、びっくりして車内の停車駅案内を見た。

(この通勤快速、全然止まらないじゃないか!)

通勤快速は路線によって色々で、通常の快速よりも停車駅が多いところもあるし、少ないところもある。彼は、通勤快速は快速より止まる駅が多いものだと思い込んでいた。

慌てて携帯時刻表を広げて列車を調べるが、もうどうやっても間に合わない。

受験シーズンだと、間違って乗車した受験生のために、途中駅で臨時停車して車掌室から特別に降ろしてあげることもある。しかし、さすがに「自社社員が乗る電車を間違えたから臨時停車」とはならない。

彼は半泣きになりながら、なすすべもなく遥か遠くの駅まで運ばれ、そこでタクシーを拾い高速を飛ばして現場に滑り込んだ。

現場では、大卒の新人がなかなか来ないことに不審を抱き、管理者が慌て始めたが、無常にも始業のチャイムが鳴る。

仕方なくいつもどおり点呼を始めると、今日紹介されるはずの新人がいないことに一般社員も気づき始めた。しかし、そのまま点呼が終わり、庁舎の前の広場でラジオ体操が始まった。

管理者が平然としているので、

「新人は支社にでも寄ってから来るのか?」

と合点するが、そんな中タクシーが滑り込んでくる。
半泣きになりながら、タクシーから転げ落ち、管理者に取りすがる将来の幹部候補生。
前代未聞の出来事に、現場社員は驚いたり、ニヤニヤしたり、同情したり。
管理者も、もはや隠すことも取り繕うこともできない。

「早く着替えて来い」

と、苦々しく吐き捨てる。

初配属の初出社日。出世意欲満々の彼は、さっそくレッドカードをいただいた。それも、自社の電車を乗り間違えて。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 11:53 | Comment(1) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

遅刻厳禁(3)

この話題も3回目になるが、もう少しお付き合いください。

出勤遅延に異常に厳しい社風は、言うまでもなく乗務員職場が発生元である。乗務員の出勤遅延はダイヤを乱れにつながり、影響が非常に大きいからだ。
それでも、一つの職場に何百人、支社全体で千人を超える乗務員を抱えているので、どうしても根絶しない。

では、乗務員が出勤遅延した場合、どんなドラマが繰り広げられるのか見てみよう。

車両も乗務員もそうだが、故障や病気などに備えて、必ず「予備」がある。
つまり、”何もなければ何もしなくても良い”という勤務が乗務員にはあるのだ。

乗務員が出勤遅延した場合は、この予備の人を乗せればいいだろう。しかし、年休や社内研修などで予備がいない場合もあり、そうなれば非番の人を呼び出す。それも間に合わなければ、最悪、乗務員がいないためにダイヤが乱れることになる。


いずれにせよ、ダイヤを確保した後、出勤遅延した乗務員は現場管理者から事情聴取を受ける。
前日何時に帰宅したか、何時まで酒を飲んだか、何時に寝たか、朝は何時に目覚まし時計が鳴ったか、これらが時系列で並べられる。矛盾のない時系列ができあがれば、原因、背景、今後の対策などがまとめられ、報告書になる。

このように、起こしてしまった問題を放置せず、しっかり対処するのは会社としてすばらしい。本来はあたりまえのことなのだろうが、事故を隠蔽する会社はあとを絶たない。
失敗はオープンにしたくない、と思うのが人間だが、会社としてはオープンにして教訓にしなければならない。

涙ぐましいのは、出勤遅延が起きるたびに、それぞれ対策を立てなければならないところだ。単純な寝坊でも、

「今まで目覚まし時計を1つしか使っていなかったけど、これからは2個にします。」

といった具体的な対策を立てる。根絶されない寝坊に対して、その都度バラエティに富んだ対策を立てるのは難しい。「目覚まし時計を増やします」という対策は、これから10年経っても、20年経っても、鉄道現場から出され続けるだろう。


報告書ができると、現場管理者はそれを携えて支社に行く。

「若い社員の意識が低いんじゃないか?」

「今までの対策が、区内で水平展開できていないのではないか?」

「この社員、家庭内に問題があるのではないか?」

支社では、報告書をもとに、乗務員指導担当と、現場管理者との間でこんなやりとりが交わされる。本人に事情聴取したときの現場管理者は攻める側だが、ここでは守る側になる。


鉄道というのは非常に”泥臭い”ところで、このような社員の管理が業務の90パーセント以上を占める。
(最新鋭の車両や設備があるのでハイテクな世界かと思ったら大間違い。それらはメーカーがつくり、鉄道会社は飽くまでユーザー。環境は変わっても、”泥臭さ”はそれほど変わらない。)

「社員の管理」を英語で表現すれば「マネージメント」というのかもしれないが、そんな格好いいものではない。

「眠い盛りの若い人を、どうやって寝坊させないで出勤させるか。」

「サラ金に手を染めてしまった社員をどうするか。(取り立ての電話が職場にかかってきたらどう対応するか、社員の勤務態度は崩れないか。)」

「『俺たちの組合を差別するな!』と、何かにつけて怒りをぶつけてくる、過激な労働組合闘士とどう向き合うか。」

こういうことに永遠と取り組むのが「社員の管理」である。


出勤遅延などの不祥事に対して自らの襟を正すだけではなく、「他の社員を教育する!」という熱い思いを持てる人がこの業界には向いている。鉄道会社というのは、大きな学校のようなところで、大卒で入社する人は(風紀担当の)先生になる気構えが必要だ。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 12:33 | Comment(2) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

俺は営業(1)

鉄道業に「営業」なる職種があることは、入社するまで知らなかった。

お客が券売機で勝手に切符を買ってくれるのが鉄道。「営業」などしていないではないか。

ところが、券売窓口(旧国鉄の会社では「みどりの窓口」)の社員を「営業」と呼ぶ。鉄道用語では「出札」社員とも呼ぶが、一般用語で称すると「営業」になる。
驚いたことに、本人たちは臆面もなく

「俺ら営業も大変なんだよ。」

などと言うから、同じ会社の社員だった筆者も、本当にあきれたものだ。
売上を上げるために苦労している、世間の「営業」さんが聞いたら何と言うだろう。


営業の苦労を知らないで、「営業」を称しているだけならまだいい。中には、もっと信じられないような人たちがたくさんいるのだ。

最近の券売機はほとんどタッチパネル式だが、これが入った当初はお客様の誤操作が多発した。
ボタンを押す旧式と違い、うっかり画面に触っただけで機械が反応してしまい、意図した金額と違う切符が発券されるからだ。

誤操作をやってしまうのは、たいてい機械に弱い中高年。

間違って買ってしまった切符は、窓口で払い戻すのが決まりだが、信じられない対応をする社員がいる。


あるとき、「ご婦人」といった感じの、とても人のよさそうな中年女性が券売ブースに入ってきた。

「すいません、さっき券売機で切符を買ったのですが、違う切符が出てきてしまったんですの。」

券売機の誤作動と本気で思っているのか、恥ずかしいから、誤操作を機械のせいにしたのかわからないが、女性は柔らかい物腰で、上品に申し出られた。

ところが対応した出札の「営業」は怒りをあらわにし、

「あんた、間違って押したんでしょ。」

と言うなり、無言で、払い戻した金額をご婦人に返す。

下品で粗雑な社員。
ご婦人は、今までこんな扱いを受けたことはないだろう。顔面が蒼白になり、逃げるように出て行かれた。


「俺ら営業も大変なんだよ。」

と彼らが周りにもらす愚痴は、

「こういう変なババアが、自分が悪いことを棚に上げて、謝りもしないで窓口に来るから、応対する俺たち営業も大変なんだよ。」

という言い分なのである。

上司も、部下に嫌われて組合問題にされたら面倒だから、

「本当にご苦労さんだね。」

などとねぎらっているから救いがない。

お客からクレームをあげられるのも困るが、組合はもっと面倒なのだ。


お客は、間違えたら謝り、鉄道社員に許しを乞わなければならない。
社員から

「今度から気をつけてよ。」

と文句を言われても、悪いのは自分なので、謝り続けなければならないのだ。

信じられないが、これが彼らの「常識」なのである。
悪びれていないだけに、恐ろしい。

それでも、国鉄時代に比べればずいぶん改善しているのだという。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 19:11 | Comment(14) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

俺は営業(2)

前回、券売機を誤操作した客に、怒りながら返金する駅員を紹介した。
これには現職の方も含め、多数コメントが寄せられた。
http://railman.seesaa.net/article/20167784.html
「同じようなひどい出札社員がいる!」という意見がもっとあるかと思ったが、それほどでもなかった。
(出札は「キツイ」、という現職の人からのコメントがあったほど。)

不特定多数のお客を相手にする鉄道は、別な意味で大変な思いをすることがある。(それも後々取り上げる。)
ただ、その苦労を差し引いても、「み○りの窓口」には態度の悪い社員が多いと思うが、読者の皆さんの意見はどうであろう?
(前回の社員も、決して異例ではない、というのが筆者の意見である。)

しつこくて申し訳ないが、もう一人だけ紹介させて欲しい。
今回はちょっとひど過ぎるので異例かもしれないが、舞台裏の実態を反映する一例である。


乗客数の多い、とある駅。乗客数の割には駅が小さく、沿線に学校も多いので、定期券更新の時期は、「み○りの窓口」も非常に混雑する。

ある日、男子高校生が友達と旅行に行くため、おこずかいをかき集めて切符を買いにきた。
駅に備え付けられた申込書に購入する切符を書き込み、窓口前の長い列に並び、ようやく自分の番が来た。

対応した中年駅員はちょっと面倒そうに紙を受け取り、発券していく。
定期券や新幹線のような定番の切符ではなく、聞きなれないローカル駅までの切符なので、マルスの入力に時間がかかるのだ。

余談だが、JRの運賃は、発駅と着駅で自動的に決まるものではない。
(鉄道の路線・運賃検索のソフトに慣れている我々には、ピンと来ないかもしれないが。)
距離から金額を算出するので、経路を入力する必要があり、ローカルは面倒なのである。(この点は私鉄と異なる)

さらに、学割だのジパング倶楽部というのは手間がかかる。駅員にも、「割り引いてやっている」という気分もある。

「はい、全部で6万2千400円ね。」

高校生は、財布をひっくり返して青ざめる。割引など色々計算し、友達から正味のお金しか集めていなかったが、計算違いをして足りなかったのだ。

「…すいません、特急券だけにしてもらえまえんか。」

これに駅員は「キレた」。通常より時間がかかる発券だったのに、乗車券を取り消し処理するなど、許せるものではない。

「おい、ふざけるな。後ろの人も大勢待っているんだよ。お前、どうしてくれんだよ。」

他の駅員や客には聞こえないように、低い声で高校生を脅す。

「おい、どうするんだって、聞いているんだよ。」

完全に怯えた高校生はとっさに

「すいません、すぐに取りに行きます。」

まじめそうな彼は、本当にお金を調達し、30分もしないで再度現れた。

「すいませんでした。持ってきました。」

脅した方の駅員も驚いた。高校生のことだ、もう現れないだろうとたかをくくっていたのだ。

「はい、それではこちらが往きの乗車券と特急券、こちらが帰りの乗車券と特急券になります。」

脅したことを訴えられては、さすがに自分の立場が危ない。低姿勢に応対する。

萎縮していた高校生だが、駅員が低姿勢に豹変したのを見て、自分が受けた仕打ちが度を越したものであったのに気づき、怒りを覚えてきた。

スーパーでも、百貨店でも、手持ちが足りないとき、一部の商品を支払いのときに返すのは日常のこと。
「ふざけるな」って怒鳴られたり、お金を取りに返されたりするところなど、日本にはない。

しかし、高校生の彼は、鉄道会社にクレームを言う手段を知らず、また仮に言ったとしても取り合ってもらえないことを知っていた。
泣き寝入りである。

鉄道は、普段は態度の悪い高校生に困らされている。だからと言って、こんな接客が許されるわけがない。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 22:46 | Comment(22) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

一般社員と経営者

ちょっと汚い描写だがご容赦願いたい。

タバコを吸わない私は、仕事中に気分転換したくなるとトイレに行く。
それほど逼迫していない状態で行くので、なかなか用が済まない。
小便器の前に立ち、ボーっと考え事をして、頭の中を整理する。

「おっ、○○君。どう?元気にやっているの?」

隣で用を足している人から声を掛けられた。
気を緩めていたので気づかなかったが、隣は社長。本当はこちらから声を掛けなければいけないシチュエーションだ。

「あっ、お疲れ様です。はい、元気にやっております。」

「忙しいのかい?」

「例のプロジェクトが佳境なので大変ですけど、なんとか。ただ、スケジュールはやはりタイトです。」

まだ若手に分類される私は、社長と直接話をする機会はめったにないが、社長と顔を合わせたときには、現場の状況をそれとなく伝える。
現場で大きな問題が発生すれば、会社も現場を支援することになるので、その兆候があるかどうか、短い会話で報告しておく。いざというときにスムーズに事が運ぶようにしているのだ。
これは会社を背負っている社長にとっても重要なコミュニケーションである。
社長は、現場を直接指示することはないが、現場の雰囲気を感じつつ舵取りをするので、一般社員に声を掛けることを重視している。火の手が上がりそうな現場を察知するだけでなく、社員の士気もつかもうとしているのだろう。

「そうか。大きいプロジェクトだから大変だと思うが、頑張って。」

このトイレでの会話で、私のプロジェクトは楽ではないものの「なんとか」なっている、現在は大丈夫だがリスクは少なくない、というようなことを社長と共有した。
社長は、社員の士気についても懸念を持たなかっただろう。この現場はまだ、社長が注意を払う心配はない。

ところでこの会話は、鉄道会社での出来事ではない。私が現在勤めている会社での出来事である。

社長の位置づけというのは、それこそ会社によって、あるいは業界によって大きく違う。
創業者の写真が社内のいたるところに掲げられ、宗教の教祖のように祭られているところもあれば(鉄道会社でも、西武鉄道の創業者が古墳のような巨大墳墓に眠っているのは有名になった。)、一方で、外資系企業の日本法人などでは、社長は「社長」という役割を果たしている人に過ぎないという、ドライな認識しか持たないところもある。

私の現在の会社は後者に近い。
私個人は、重い責務を負っている社長を尊敬しており、当然、接するときには失礼のないように最大限の気配りをしている。
しかしそれ以上に、社長と自分は業務上のみの関係であり、失礼がないようにはするが、平伏しているわけではない。
そういう意味で、社長と平社員は身分が違うわけではなく、果たす役割が違うだけだと思っている。社長と会話をするのも、緊張感を伴ってはいるが、ためらうことはない。

一方、鉄道会社は高いピラミッド型の組織なので、そこまでの風通しの良さはない。
社長といわず、経営陣ともなれば雲上人であり、極端なことを言えば、影を踏むことも、同じエレベータに乗ることもためらわれるような雰囲気がある。
宗教じみた個人崇拝はなくても、上下の隔ては厳格である。

鉄道会社でも、当然、現場第一主義を掲げ、現場とのコミュニケーションが大事であるとの認識は共有される。しかし、上意下達で中間層の厚いピラミッド組織のため、トップと現場の会話は盛んではない。
(そもそも会社に敵対する労組も多いので、そんなことはありえない。)
トップは、以前に一緒に働いたことのある少数の人々を社内人脈にして、現場第一線とのホットラインを持つ人がわずかにいる程度である。
「幹部社員による現場社員との対話」というのが開催されることもあるが、イベント的で、厳しい言い方をすれば、芝居のように見える。会社が現場を大事にしている姿を社内で宣伝する意図が見え、開催する前にシナリオが決まっているのが感じられる。

「今度、大卒総合職社員で勉強会を企画する。」

こんなお触れが、ある支社で流れた。勉強会とはなんだ?英語の勉強でもするのか?そもそも、担当業務がまったく異なる人たちを集めて、共通の勉強テーマなんかあるのか?
こんな疑問を感じて勉強会の内容を問うと、

「総務部長を呼んで、会社や支社の方針をお聞きするのだ。」

という。会社や支社の方針は、ごく限られた人々の間で練られ、実行するときには上意下達。だから、偉い人からその背景にある会社の考えを聞いて、それを奉じて業務にあたるのが「勉強」となる。
会社の「思い」と一般社員の「思い」が直接触れ合うのは、社内でのトップと社員の何気ない会話ではなく、勉強会であったり、酒の席になる。
これらは、一般社員の方が席を設けて偉い人に近づくことで成り立つ。

宣伝の臭いが強い、芝居のようなイベント。勉強会や酒席で、組織の意思を受け止め、人脈を形成する。まるで政治の世界のようである。

このトイレと勉強会の例で、経営陣と一社員の関係が会社によって大きく異なるのがわかるだろう。
社員にとってどちらがいいかは個人の問題である。現場業務に励むには、どちらの環境でも大差ない。
ただ、業務の中で経営との一体感を感じたい場合、鉄道では、トップの意向を恭しく聴いた上で従順になるか、自ら偉くなってトップに近づくしかない。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 21:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

無実で痴漢の容疑者になったら

「ちょっと、触ったでしょ!」

私が鉄道会社を退職した後のこと。帰宅ラッシュの通勤電車で女性が大きな声を上げているのを、少し離れたところで見かけた。
声の主は30代、もしくは40代と見受けられる若くはない女性。満員電車で大きな声を上げるのは度胸のいることだが、度胸は十分ありそうな人である。

「触ってない!変なことを言うな!」

頭の禿げ上がった、小太り、50代ぐらいの男性が、負けないくらい大きな声をあげ始めた。
どういう状況かは、車内の人はすぐに理解できた。女の人は痴漢されたと怒っており、容疑者となった男性は言いがかりをつけられたと怒っているのである。
(言い逃れの抗弁かもしれないが。)

「ふざけないで!警察呼ぶわよ!」

痴漢をしたあげくに、謝るどころか大声で言い返してくる男の傲慢さに、女の人はますます怒りのボルテージをあげる。女の敵、絶対に許してなるものか、という気持ちである。

「上等だ!俺はやっていないんだ!」

真相のほどはわからないが、もしも冤罪であれば、男の方も我慢ならない。
いつもどおり通勤電車に乗っているだけなのに、突然見知らぬ女に犯罪者に仕立てられてしまったのだ。それも公衆の面前で。こんな屈辱は絶対に許せない。

「次の駅で降りなさいよ!」

「おう、降りてやる!」

「逃げないでよ!」

「やっていないって言っているだろ!誰が逃げるか!」

周りで見ている乗客も、チラチラ様子は伺うが、立ち入ろうとする人など一人もいない。本当に痴漢があったのかな?男と女の顔を見比べながら想像してみるが、中年の男女だけにそれほど興味もわかない。どっちでもいいのだ。
世間というのは人を見た目で判断するものである。
痴漢を受けた女性が中年ではなく、か弱い女子高生であれば、正義感を燃やして、

「どうしたの?痴漢?」

と声を掛ける男性も現れるかもしれないし、容疑者の男性も、頭の禿げ上がった、小太り、50代だけに、それだけで周りから容疑濃厚の目で見られてしまう。

私の印象としては、
(本当に痴漢をしたのなら、ここまで抗弁するかな?正直、相手の女性も中年だし…。たぶん、混んでいるから、意図せず男の手が女の尻にでも当たっただけなのだろう。)
とは思ったが、真相はわからない。
二人は大声を上げながら、ともに怒りが収まらなくなり、手がつけられない状況になっていた。

さて、次の駅で降りた二人、その後、駅員が呼ばれ、駅員に連れられて駅事務室に行くことになるだろう。
駅事務室では、女性は男性と離れたところに案内され、駅員から、被害を受けたか、警察を呼ぶかどうかを聞いてもらえる。
男性はといえば、言い分など聞いてもらえず、女性が警察を呼べば犯罪者になるだけだ。
警察が到着すると、警察は女性の被害を聞き、男性に容疑を認めるかを尋ねる。男性が容疑を認めず、女性も許さないとなれば、警察は男性を署へ連行する。
男性が警察署で飽くまで無罪を主張すれば、「強情なふてぶてしい奴」との心象を警察は持つ。そうなると警察の威厳にかけて検察に送られ、立件される。
日本の司法は圧倒的に検察有利なので、証拠が乏しい痴漢事件では、無実の証明ができないと有罪になってしまう。「疑わしきは被告人の利益に」とは言うが、現実は弁護側は弱いのである。
痴漢事件でも、容疑者の手に残った繊維などの捜査手段はあるが、人を疑うことが商売の警察で、そこまで公平に、手間をかけ調べてくれるとは限らない。

あなたが男性で、無実なのに痴漢の容疑者にされてしまった場合、駅員なんかに期待してはいけない。
駅員は、痴漢があったかどうか公平な立場で裁いてくれるわけではない。
被害の訴えを無視すれば問題になるので、警察を呼んで欲しいと言われれば機械的に呼ぶだけである。
そのうえ、駅員に連れられて駅事務所に行くと、それは「私人による準現行犯逮捕」ということになるらしい。
警察も、
「本当にやっていないなら、署で話をゆっくり聞くから」
と、任意同行のように見せかけて警察署に連れて行くが、これは逮捕された容疑者を連行していることになる。もはや、外部への連絡は制限され、帰宅などの自由は奪われてしまうのだ。

無実なのに痴漢の容疑者になってしまった場合、後ろめたくなくても、駅員についていってはいけない。

「私は痴漢などやっていません。本当です。」

と誠意を尽くして被害者を説得する。駅員も警察も、女性の訴えを基づいて動き、あなたの訴えに基づいて動くわけではない。無実を主張して怒鳴っても、相手が怒れば自分が不利になるだけなのである。
 説得しても、相手が納得してくれない場合、

「私は痴漢をしていないので、駅事務所に行きません。」

と言って、立ち去るのが正解なのである。卑怯のように感じるが、後ろめたくなければなおさら、何といわれようと立ち去るのだ。誠意を見せるために連絡先を教えてもいいが(その後、女性はあなたを訴えるかもしれないが)、その場で「準現行犯逮捕」されるよりは、はるかにましである。
後日警察が来れば、

「逮捕状はあるのですか?」

と応じ、警察が裁判所から逮捕状を取得し、あなたに提示された場合のみ従うだけである。そのまま駅事務所に行けば「有罪行きベルトコンベア」(「ぼくは痴漢じゃない!」(鈴木健夫))に乗るだけに、大きな差である。
女性が立ちはだかったり、正義感に燃える駅員に腕を捕まれて、立ち去ることができなくなれば弁護士を呼ぶ。顧問弁護士などいなくても、弁護士会の当番弁護士を呼べば良いのである。最低でも家族に連絡し、弁護士の手配を託してから警察に会わなければならない。

満員電車に乗るときには、弁護士会の当番弁護士センター(都道府県別)の電話番号は調べておく。(当然私も携帯に登録している。)この世から痴漢をする犯罪者がいなくならない限り、痴漢の冤罪を被る危険性は、男であれば誰にでもあるのである。
痴漢は憎むべき卑怯な犯罪である。被害者の女性を苦しめ、罪なき男性を冤罪に陥れる土壌を生む。

駅員は、容疑者を駅事務所へ連れて行くことの意味の大きさを自覚していない。無実のあなたを守るのは、駅員ではなく自分自身だけである。

 (参考文献)
 「ぼくは痴漢じゃない!−冤罪事件643日の記録−」
                       (鈴木健夫)新潮文庫
 「痴漢『冤罪裁判』 男にバンザイ通勤させる気か!」
                       (池上正樹)小学館文庫





posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:52 | Comment(8) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

現場採用のオヤジたち

金融危機により、社会全体で雇用が不安定になってきた。そうなると鉄道会社は、就職先として人気が上がるのである。
高嶺の花の鉄道会社?確かにそうかもしれない。しかし、現場のオヤジさんたちまで滅私奉公でバリバリ働いているわけではない。
今回は、そんな鉄道現場のオヤジさんたちの横顔を見てみることにしよう。


大きな工場が進出してないローカルで、貴重な雇用の受け皿となっているのが、役所、警察、消防署、郵便局、そして鉄道である。
そんな地元に根を下ろして働くには、これらの職は貴重であり、就職できた人は地元でステータスを得る。

鉄道会社であれば、通勤も自社線を使うわけなので、田舎からの長距離通勤でも会社に気兼ねすることがない。また乗務員、駅員など、泊まり勤務が多いので、通勤の回数は普通の会社員より少なく、通勤の負担が少ない。普通の日勤の会社員は週5日×2回の通勤になるが、泊まり勤務主体であれば、例えば週5回程度に減り、またラッシュ時間帯から外れるため、通勤の苦労がかなり軽減できる。
鉄道は、田舎からの長距離通勤に向いている仕事なのである。

「オラの地元は遠いからヨ、片道の通勤でも2時間半ぐれぇーかかるんだよ。でもヨ、泊まり勤務だから、毎日通勤するわけでねぇーべ。(泊まり勤務の明けの)帰りはヨ、昼間の空いている電車の中でビールも飲めるし、悪くねぇー。ガハハ。」

実際、地元を愛して、地元を離れず、長距離通勤をしている人は多い。
大きな祭りが開かれるときなどは、その地域に住む人たちがこぞって休みを取るため、要員調整に苦労するぐらいだ。地元に深く根を下ろしている人たちにすれば、

「今年の祭りは勤務になってしまうから、俺は神輿を担げないわ。」

というのは言い訳にもならない。地元の価値観からすれば、建前はどうあれ、本音では、「勤務のような私的な都合を優先するのは勝手だ」と見なされかねないのだ。

心得ている現場の勤務計画担当者は、すでに計画の段階で、大きな地域のイベントと、その地域の人の勤務が重ならないようにする。そこまで気を配ってこそ、うるさい現場のおじさんたちの信望を得られるわけで、それくらい気が回らないと務まらないのだ。

ちなみに、ローカルでは兼業農家にとっても鉄道の勤め口は重宝する。
農業は収入が安定せず、専業だとかなり広い農地で行うので負担が大きい。
そのため、農地を持っている人も普段の手入れは老年世代にまかせ、農繁期以外は勤めに出る兼業農家が多い。
そうなると、勤めに出るとは言っても、農業をやらなければならないので土地から離れたくはなく、鉄道のような仕事が向いている。

団塊の世代以降、出生数が減ると、跡取り息子が生まれず、娘だけの農家も多くなったが、逆にそういう家にすれば、鉄道マンを婿養子に迎えられれば御の字。定年まで鉄道で安定した収入を得て家計を支えながら、先祖代々の土地も守れる。ローカルの現場で働いていると、独身者にはそれとなく声がかかり、中年層でも婿養子に入って苗字が変わる人も少なくない。

地元の土地持ちも、土地を持っていなくても婿入りとなり、農業で先祖代々の土地を守る人は少なくない。
兼業農家の彼らにとって、鉄道の安定した収入はなくてはならないが、滅私奉公までして尽くす気にもならない。

「あんたのところは田んぼも広いし、山も持っているデヨ。鉄道なんてアルバイトみてぇーなものダッペ。」

「山は金を生むわけでねぇーから、そんな優雅なもんでもねぇーよ。ガハハ。」

土地持ちは羨ましいものである。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 21:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

辞令とともにさようなら

「鉄道業界の舞台裏」では、私の勤務経験を元に、鉄道業界の実態を紹介してきた。
その多くはシニカルで、これから就職しようという人に、ちょっと冷や水を浴びせかける内容だったかもしれない。
今回は珍しく、大手鉄道会社の良いところ紹介しよう。

鉄道会社の社員は、基本的にゼネラリストの道を歩む。系統をまたぐことはないが、同じ系統の中では異動を繰り返す。
車両のメンテナンスに関わる人も、メンテナンス現場だけでなく、指令に異動し、支社のような非現業部門にも異動する。時に出向することもある。
ちなみに、これは何も大卒総合職に限った話ではない。異動する範囲が支社内だったり、頻度が少なかったりするものの、異動はいわゆる現場採用の人でも発生する。

車両のメンテナンスの人も、車両の運用、本線で発生する車両トラブルへの処置、現場に通達を出す支社業務など、広く知っておくべきだ、という考えなのである。
(かと言って、乗務員や駅員になることはないし、同じ技術系でも、土木・保線系、電気系になることもない。)

どんな仕事でも数年も経験すれば飽きてくる。そういう意味で、定期的に異動があるのは組織にとっても刺激になって良い。
もちろん、異動する本人にとっては、嫌な異動もある。車両メンテナンスの現場でフォークリフトや玉掛のスペシャリストだった人が、望まぬ異動で、指令に行って電話を相手にする仕事になったり、非現業でパソコンを使う仕事になったのでは、あまりにもかわいそうである。

 「遅刻厳禁(1)」
 http://railman.seesaa.net/article/7063995.html

しかし、出世には異動を伴う。現場の助役になるのも、同じ現場の中で主任から昇進するのではなく、一度非現業の職場に異動して助役試験に合格してから、現場に助役となって返り咲く。
同じ仲間だった人が、ある日突然管理職になるよりも、一旦外に出て、偉くなって帰ってきた方が、周りは受け入れやすいのだ。

そのため、一般社員よりも役職につく人の方が異動は多い。裏を返せば、嫌な上司でも数年待てばお別れすることができるのである。

実際に異動が発令される前に噂が流れる。

「そろそろウチの駅長も異動になるなぁー。」

「グチグチうるさいヤツだったから、さっさといなくなって欲しいな。」

「次に誰が来るかが問題だぞ。」

「あんまり思い当たらないけど、大卒の若いのがポッと来るんじゃないか。」

自分が辞令一枚で将棋の駒のように扱われるのはたまらない。

 「大卒総合職の配属先(1)」 
 http://railman.seesaa.net/article/16790179.html
 「大卒総合職の配属先(2)」 
 http://railman.seesaa.net/article/17394815.html

しかし、嫌な人には飛んでいって欲しいものだ。
現場で働いている人にとっては、他の現場や非現業の職場なんて、ほとんど関わりがない所。まして他支社ともなれば、別会社のようなものである。
異動で現場から出て行ってくれれば、もう消えてくれたようなものだ。
嫌な人ともずっと一緒に働き続ける中小企業。それよりは、上司がどんどん入れ替わり、数年間の腰掛け親分に担ぐ大手鉄道の方が、よっぽど楽である。

posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:25 | Comment(4) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

おかげさまで・・・『鉄道の裏面史』


『誰も語りたがらない 鉄道の裏面史』(文庫)が増刷になりました

ライターというのは読者の「代行業」みたいな存在で、読者に代わって調べものをして、それを凝縮しながら読みやすい文章にするのが仕事です。

『鉄道の裏面史』も、2年以上かけて書いたものですが、

「読みやすかった」「2時間で読破した」

などの声が寄せられています。
酷評もなく、それなりに満足していただいているようで、書き手としては安堵しています。

おかげさまで増刷になりました。今後とも、よろしくお願いします。


第1章 事件と事故の鉄道史
 信楽高原鐵道列車衝突事故 ローカル線で起こった正面衝突事故
 石勝線列車脱線事故 トンネル内で起こった列車火災
 上尾事件と首都圏国電暴動事件 現代では考えられない乗客の暴動
 107名もの死者を出した 未曾有の大惨事「福知山線脱線事故」
 狙われた東京の地下鉄 同時多発テロ「地下鉄サリン事件」)

第2章 国鉄とJRの裏面史
 下山事件 初代国鉄総裁は轢死体になった
 弾丸列車の夢 東京発北京行の新幹線
 分割民営化騒動記 朽ち果てた国鉄からJRへ)

第3章 金が動かした鉄道史
 異彩を放つ堤康次郎の生涯 西武王国の家督
 駅施設や土地買収をめぐる疑惑 新幹線の利権を手にしたのは誰か?
 鉄道会社と企業買収 村上ファンドに買収された阪神電鉄


『誰も語りたがらない 鉄道の裏面史』
 http://amzn.to/1QWW0uA
posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 18:36 | Comment(4) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

徹底解析! ! JR東海&東海3県の鉄道会社

ごぶさたしております。皆様、いかがお過ごしでしょうか。


私自身は、海外に仕事で長期滞在していまして、しばらく英語の勉強などに時間が取られてしまう状況でした。

そんな中ですが、(また告知で恐縮ですが)先月出版された

徹底解析! ! JR東海&東海3県の鉄道会社


 
で、「エクスプレス予約」について書かせていただきました。

(海外に行く前だったこともあり、執筆量を絞らせていただきまして、担当したのは2ページだけです。)


ちなみに、昨年はJR東日本を取り上げており、本シリーズは2回目になります。

徹底解析!!JR東日本 (洋泉社MOOK)

この鉄道会社を分析するシリーズは、なかなか人気があるようですよ。


私の自著、

誰も語りたがらない 鉄道の裏面史』(文庫) 

は、Amazonで高評価をいただいておりますが、その割には売れ行きが地味な感じです。あやかりたいものですね・・・。

今後の糧にしますので、読後の感想など、Amazon等で率直に評価してください。


今後とも、よろしくお願いします。
posted by 鉄道業界舞台裏の目撃者 at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 鉄道会社の知られざる社風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする