1周年最初のテーマは、(おめでたいのとは正反対の)人身事故。
気がつけば、季節は五月病の憂鬱な季節。
(※この記事は、2006年5月18日に公開しました。)
4月からの新しい環境に慣れず、疲れた人たちは、寂しさ、虚しさに苦しみ、ホームに入ってくる電車を見ると、ふらっと吸い込まれそうになる。
ホーム担当の駅員に言わせると、自殺しそうな人は、見れば分かるのだそうだ。
心ここにあらず、ボーっとうつろな目をしていて、声をかけるとハッと我に返る。
自殺する人も色々だろう。中には覚悟を決め、しっかりとした意識を持って死ぬ人もいるだろうが…。
今回はイントロダクション。人身事故に関する鉄道隠語を最後に紹介して、続きは次回に譲ろう。
鉄道では、人身事故やその遺体のことを「マグロ」と言う。
由来は良く分からないが、マグロも轢死体も「赤身」だからだろうか。
死に方をよく考え、覚悟を持って逝く人は、「マグロ」になる鉄道自殺は選ばない。
続く
人身事故に遭った車両を洗う話(拙著「鉄道業界のウラ話」の紹介)
私は率先して車両の下にもぐり、調査を始めた。怖気づかずに床下機器にライトを当てる。 「うっ、くさい!」 視覚にばかり注意を払っていたが、最初に強烈な刺激を受けたのは嗅覚だった。 (確かにこれはマグロをやった車両だ) しかし、人間の体というのは、こんなにも強烈なにおいがするものなのか。 皮膚に覆われているから普段はにおわないが、内臓というのは強烈にくさい。 呼吸を抑えながら、ライトを床下機器に向けて点検すると、運転台の下の機器はきれいだったが、その後方の台車は血に染まっていた。 「うわぁ。台車のあたり、かなり汚れています!」 「こりゃ、ひでぇーな」 後から車両の下にもぐってきたベテランも、声を上げた。
2010年3月単行本
 
| 2012年4月文庫本化(650円)
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ストレスに負けない生活
自殺する原因も様々だが、高齢者などの病気を苦にした自殺で、鉄道に飛び込む人は少ない。通勤・通学途中の健康な人が飛び込んでいるケースがほとんどである。
「健康な人」と書いたが、外見的にそう見えても、多大なストレス、鬱のような精神的疾患を抱えていたことだろう。
精神的疾患とまでいかなくても、ストレスが溜まり、ボーっとホームに立っているとき、力強く近づいてくる列車に吸い込まれそうになった経験は多くの人が持っているのではないだろうか。
現代社会に生きる人間にとって、ストレスに日々さらされるのが必然なら、ストレスを解消したり、ストレスに対する抵抗力を強めて、溜め込まないようにしなければならない。
私も仕事で強いストレスを受けたとき、半日休暇を取ってこの本を読破し、この本に書かれているリラクセーションを試した。
急に元気になるような特効薬ではないが、東大の学者が書いているだけあって合理的である。
精神的疾患に至る前にリラクセーションで「ストレスに負けない生活」を送り、それでも不調を感じてしまったら、すぐに病院に行くべきだ。
「ストレスに負けない生活」熊野宏昭 2007/08 ちくま新書

発行から1周年
おかげさまで、「鉄道業界の舞台裏」も1周年を迎えることができました。
今では、読者登録してくださっている方も540人を超え、ホームページも毎日150人以上の方々に見ていただいております。
(※この記事は、2006年5月18日に公開しました。)
1年前、筆者が「鉄道業界の舞台裏」を始めた動機は、鉄道が人々に身近な一方、その実態が知られていないギャップに問題を感じたからです。
イメージだけで鉄道業界に就職する若者。これは、本人にとって非常に不幸なこと。
公共的で平和なイメージの業界は、実は労務が中心のドロドロした世界である。
業界のことを知らずに就職すると、本人は戸惑い、悩んでしまう。
家族や周りの人も、優良企業の鉄道会社に問題があるとは思わず、本人に問題があると考えてしまう。
ドロドロした舞台裏があるのは鉄道だけではないが、イメージとの乖離の激しさは、他の業界よりも激しい。
筆者は、鉄道の世界に飛び込む若者、その家族には、OBとしてエールを送る。しかし、実態をよく理解してから入って欲しいと思う。
就職する人ばかりではない、毎日の通勤・通学に命を預けている利用者にも舞台裏を知って欲しい。
福知山線の脱線事故の前は、「命を預けている」という意識などなかっただろうが、鉄道も、安全を第一にしないと大惨事を招く。
しかし、鉄道の安全について発信する識者は、航空の世界に比べて少ない。
航空は、元パイロットなどの内部を知る人々や、多くの専門家が発言しているが、鉄道の内部事情者からの発言はほとんどない。
長くなりましたが、これからも「鉄道業界の舞台裏」をご愛読していただきますよう、心よりお願い申し上げます。
関連コンテンツ
○ 人身事故(1)
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人身事故(2) ○
人身事故(3) ○
人身事故(4) ○
ストレスに負けない生活